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木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

2024年が明けました

2024年が明けました

新年明けましておめでとうございます
旧年中は大変お世話になり ありがとうございました。

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大阪箕面では東の空、地平線に沿って雲が拡がり
初日の出はずいぶん時間がたって雲間からとなりました
多少雲が拡がったりもしていますが 穏やかな日です
この同じ太陽がウクライナの大地にもパレスチナの地にも等しくのぼります
この太陽の下で人々が平穏な日々を過ごされますことを切に祈います

  * * *

今年の年賀状です

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昨夏に訪れました カトリック新発田教会です

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別柄はその外観です

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文面欄です


本年もどうぞよろしくお願いいたします


 * * *

PS

平穏な日々をお祈りしたばかりのところですが
それを乱される出来事が起こってしまいました
夕刻に能登半島にて大きな地震が発生し
津波も押し寄せました
家屋の倒壊や火災なども起きている模様です
今後被害状況が明らかになっていくとは思いますが
被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます
  1. 2024/01/01(月) 12:07:14

2023年を振り返って

ウクライナの戦火は終息の兆しも見えないまま、パレスチナでは新たな戦争が始まり、連日のニュースでは一般市民の悲惨な状況が、ガザの街の破壊とともに伝えられています。
今年も残り少なくなりました先日、舞台「ある都市の死」を観てまいりました。
第二次世界大戦下のポーランド・ワルシャワの出来事を描いた物語ですが、今この時代に私自身がニュースで日々目にするウクライナやパレスチナ・ガザの街の映像がおのずと脳裏に立ち上がり、舞台の上と劇場を越えてかの街とが混じり合って物語が迫ってきます。
過去の悲惨な出来事が歴史の教訓とされず現代においてもなお繰り返される現実、このお芝居のもととなった数冊の著作、そしてその原作からの映画なども世界中の多くの人々に訴え心に響いたはずではあるのですが・・・。
日本で新たに紡ぎだされるこのお芝居もまた、少しづつ静かに人々の心に染みわたり、こうしたことの重なりがやがて争いのない世界へとつながっていくことを願います。

それにしても「戦場のピアニスト」としても映画化されたこの物語を、セットの転換もない2時間、舞台の上に立つ2人の役者と一人のピアニストによって描き出す演出家の構想力は本当に凄いものだと思います。そしてその2時間をほぼ即興のピアノ演奏で紡ぎだす小曽根真さん(お芝居の生演奏では奏者は舞台あるいは客席の片隅で演じることが多いのですが、このお芝居ではグランドピアノが舞台のど真ん中に置かれ、小曽根さんはそこで最初から最後まで弾き続けます。お芝居でのビアノの役割をまさしく体現しています。)と、言葉を超えて身体で表現する持田将史・小栗基裕両氏には深い感銘を受けました。時間とともに消えてなくなるという一回性、まさに一度限りならではのお芝居ではありますが、繰り返し観て感じたい舞台です。

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 * * *

おかげ様で今年も設計の仕事に努めることができましたその傍らで、様々な建築・美術・音楽・舞台にも実際に触れ、心の糧とすることができました。

東京赤坂の迎賓館和館游心亭と東博東洋館、そしてに京都迎賓館ついてはブログに綴りましたので、それ以降のことを記しますと、なんといっても夏の終わりの新潟新発田訪問が心に残ります。

長年の夢でありながらなかなか訪れることがかないませんでしたカトリック新発田教会(A.レーモンド 1966 資料によっては1965?)に、ようやく行ってまいりました。かつて札幌の聖ミカエル教会で感じた神々しさよりもむしろ、より素朴な印象です。平面形式・立体形状・架構・構造材・仕上材 そのいずれもが嘘がない真正さに満ちています。結構複雑な小屋の架構であり変化に富んだ外観ではあるのですが、決して声高に主張するのではなくただ質素でつつましく正直にある、という建ち方です。

この新発田教会のすぐ裏手には司祭館があり、何の変哲もない切妻の木造二階建てなのですが、不思議な味わいに満ちています。庇を支える梁が二つ割りの丸太ということからわかる通り、同時期にレーモンドによって設計されたものでした。
教会内には工事中の写真もおかれてあり、レーモンド夫妻も写っています。教会も築後60年近くとなりますが、建設時と変わらぬ素材・変わらぬ設えで大切に使い続けられています。この「変わらぬまま」ということこそが最も深く心に刻まれ考えさせられることです。

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カトリック新発田教会外観
住宅街の中につつましく建っています

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カトリック新発田教会 内部
丸太の小屋組み レンガ積みの壁の上部はベニヤ板張りです

この教会からほんのすぐ先には、内井昭蔵氏による新発田市民文化会館(1977)・蕗谷虹児記念館(1987)が建ち、横を見ればまだ新しい新発田市庁舎(ヨコミゾマコト 2017)が目を引きます。

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新発田市民文化会館と蕗谷虹児記念館
手前の新発田市立歴史図書館も恐らくは同じ内井先生のご設計と思われます

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新発田市庁舎
手前のキューブが巨大な半屋外空間 雪国ならではの仕掛けでしょうね

時間をかけてこれらの建物をじっくりと味わい、駅に戻る途中にはなにやら気になる建物が・・・。
東京の隅田川沿いに1912年に建てられたという大倉喜八郎の別邸がゆかりの新発田市に移築され、ちょうどこの春から一般公開となった「蔵春閣」という木造の建物です。賓客の接待用建築ということで、唐破風の豪勢な造りで階高もやたらと高く、「いかにもっ!」という感じです。
せっかくなので立ち寄って内部も見学させていただきましたが、この日の酷暑、空になったペットボトルにおいしい冷水を満たしてくださった受付の方々の親切が建物にもまして心に残りました。
新発田は人にも建物にも愛情豊かなのでしょうね、いい所です。

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蔵春閣外観 酷暑の平日でしたが縁日で露店もたくさん出ていました

この旅は実に盛りだくさんで、初日夕刻岐阜の長良川沿いで小泉今日子さんの舞台「ピエタ」を見て、翌日には東京に移って「ガウディ展」を訪れ、夕刻から仕事の打合せ、その翌日も引き続き終日打合せを持った後、吉祥寺のライブハウスで念願の中牟礼貞則さん稲葉国光さんを含むクインテットの演奏に浸り、その余韻に包まれて夜行バスで新潟に移動した次第です。早朝に新発田に着いてあちこちを堪能した後、新潟に戻る途中で青木淳氏設計の潟博物館・遊水館(ともに1997)に立ち寄り、夕刻には長谷川逸子氏設計のりゅーとぴあ(1998)へ、日の長さも存分に活かして充実と言いますか欲張りと言いますか、あの暑さの中よくぞ歩き回ったものです。
新潟からの帰阪もまた夜行バスで、そして大阪市内の現場打合せにちゃんと行ったのですから、好きなことをしていたら暑さも疲れも年齢もどこかへ忘れて・・・、いやいや気を付けないと・・・。

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建築界では「潟博物館」という名称ですが 一般には「ビュー 福島潟」

それ以外では、愛知県豊田市の逢妻交流館(妹島和世 2010)、イケフェス大阪2023で見学がかないました 鴻池組旧本店洋館・和館(久保田小三郎 1910)、旧河崎經吉邸(木子七郎 1937)などが特に印象に残ります。

逢妻交流館は平面も断面も巧みな計画と思い知らされ、鴻池組は洋館のアールヌーヴォーと和館の造作の技に驚かされ、旧河崎邸では玄関ホールの暗さが印象深く、象嵌細工なども含め木というものの多彩な表現技法に目を奪われました。

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逢妻交流館
訪れた日はあいにくの雨模様でしたが、雨水がどう処理されているのか謎でした・・・
雨粒になって辿ってみたい気分

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鴻池組旧本店
手前に洋館 その奥に和館が建ちますが なんと一体的につながっています

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洋館のこれでもかっ!と言わんばかりのアールヌーヴォー
暖炉の両側はなんと 収納式のベッドです

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和館座敷の見事な書院障子

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旧河崎經吉邸は新たに木子七郎設計と判明したものだそうで
オーナーの理解によって取り壊しの予定が撤回されたとのことです
オリジナルの住居の姿としては最初で最後の見学会 という貴重な機会でした

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旧河崎經吉邸 玄関ホール

 * * *

年初に 神戸での李禹煥展、京都でのアンディ・ウォーホル展、豊田でのゲルハルト・リヒター展 を訪れたことも記事にした通りですが、そこでちらりと触れました2月の春日大社での杉本博司展に加え、11月には渋谷区立松濤美術館での「杉本博司 本歌取り 東下り」展にも訪れることができました。
昨年2022年に姫路で行われた「杉本博司展 本歌取り」を行きそびれてしまいましたが、仇?をとることができました。加えて会場となった松濤美術館もまた、昨2022年の 「白井晟一展」 を見逃した因縁の場所、こちらでも仇を討った気分です。
松濤美術館(白井晟一 1980)は昨年暮れの記事に書きました静岡の石水館(1981)と姉妹のような建物で、こちらもまた竣工すぐの頃に訪れて以来ですので40年ぶりほどの訪問ですが、石水館のような改変もなく、恐らく何も変わってない印象です。美術館のウエブサイトを見ますと2013年に改修が行われているようですが、その際には白井晟一の設計を崩さないよう、建築当時と同じような見た目を維持することに注力されたとのことです。美術品に値する建築物であれば、美術館としては当然の態度ではあります。
この松濤美術館でも昨夏の石水館と同様幻惑的な扱いが見られました。展示室の天井に放射状に露出する木製の梁型のようなものは、壁に露出する柱型のようなものとずらして設けてあります。梁型のようなものは空調でしょうか。しかし柱型は必要なものなのかどうか・・・、展示壁面にとっては邪魔なだけですし、もちろん構造でもないですし・・・。アイロニーとしてずれをわざわざ表したかったのでしょうか?
杉本氏の展覧会では特に、印画紙に現像液に浸した筆で直接書いたという書の作品に目を奪われました。確か解説によればコロナ禍で渡航も制限される中、撮影に出られず印画紙が劣化するため廃棄に及ばず廃品利用に打って出ての制作だとか、その創意も凄いし出来上がった作品自体も斬新で素晴らしいし、転んでもただでは起きないといいますか、元を取る以上に付加価値までつけるという、いかにも杉本博司氏の凄さが現れた作品と感じました。
東京では年末に世田谷美術館(内井昭蔵 1986)にて倉俣史朗展も見ることができました。

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渋谷区立松濤美術館 外観
住宅街の中に隙間なく建っています
搬出入とか収蔵庫とか どうなっているのでしょう?

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2階サロンミューゼ

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「杉本博司 本歌取り 東下り」展での 書 「Brush Impression」シリーズ

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世田谷美術館 外観
渋谷区立松濤美術館とは打って変わって
広い公園の中にまあなんとのびやかに建っていることか
どちらも贅を尽くした建物であることには変わりませんが
この世田谷美術館、私の故郷に建つ一宮市博物館の兄貴分?です

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世田谷美術館 「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」展 の様子

7月に大阪で新宮晋+レンゾ・ピアノ 二人展が催され、そのオープニングセレモニーでは久しぶりに石田俊二さんと岡部憲明さんにもお会いできました。関西国際空港旅客ターミナルビルでの新宮さんとレンゾさんとの協働の経緯をこの展覧会で初めて知りました。関空も来年2024年には開港30周年、時の流れを感じます。

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大阪中之島美術館 「Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展」

 * * *

舞台「ある都市の死」でこの記事を書き始めましたが、今年も数多くの舞台に接することができました。

この12月に観ました「ねじまき鳥クロニクル」、もともとは2020年3月に観る予定でチケットも取って楽しみにしていた舞台でしたが、東京公演が開幕して間もなくコロナ禍となり、わずかな公演が実現したのみで残るすべてが中止となってしまったものです。とても残念でしたが、それがほんの数年で再演され観ることができるとは!そして、期待に違わず圧巻の舞台でした。舞台とは肉体だと 改めて知らされました。思えば昔お芝居というものに心を奪われ始めた頃、プロの役者の訓練された肉体というものに圧倒されたものでした。寺山修司の舞台にせよ、太田省吾の舞台にせよ、まず肉体でした。その想いがまざまざとよみがえりました。キャストの中で「特に踊る」と書かれた方々の、ソファからヌルヌルっと湧いてくる肉の群れにはたまげましたが、何より吹越満さん、一人で延々と語り、その間宙に持ち上げられたり逆さになったりでまさに超絶でした。本当に58歳?大友良英さん始めお三方の演奏も言うに及ばず、です。

ケムリ研究室の「眠くなっちゃった」は、いったい次の瞬間には何が起きるのやら?とハラハラドキドキの連続で、KERAさんの術中にはまりっぱなしの3時間です。
世田谷パプリックシアターで見ました「無駄な抵抗」は、劇場のすぐ外にある現実の駅と鉄道が、劇場内で繰り広げられる絵空事と混然一体となってまさにここでこそ観るお芝居、同じ前川知大さんの「人魂を届けに」とともに超常現象の異界に浸りました。
青年団の「日本文学盛衰史」は面白くて、芝居の後高橋源一郎さんの原作本を読んで、これがああなるの?と改めてびっくり。
木ノ下歌舞伎の「勧進帳」も斬新で演出の醍醐味を味わい、三谷幸喜さん自らの演出による「笑の大学」は、舞台の後初演版の録画や映画化版、さらにはオリジナルのラジオドラマまでを見比べ聴き比べ、と一粒で二度ならぬ三度も四度も楽しみました。
赤堀雅秋版「蜘蛛巣城」、野村萬斎・裕基親子の「ハムレット」、NODA・MAP「兎、波を走る」などなど、もうキリがありません。

一方で6月に予定していました「エンジェルス・イン・アメリカ」は、第一部第二部合わせて約8時間を一日で続けて観るということにわくわくし、気力体力の充実を図っておりましたところ、前日になって急遽公演中止となったことはとても残念でした。

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青年団「日本文学盛衰史」s

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音楽では、新発田行きの文中で触れました吉祥寺サムタイムでの中牟礼貞則さんを含むカルテットの演奏がなんといっても心に残ります。演奏もさることながら、このライブハウスの空間が、学生の頃に京都で入り浸ったジャズハウスの空気感をよみがえらせ、時間が巻き戻されました。

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5月の小曽根真さんのカルテット、このメンバーを聴くことができるの!ともうチケット発売の頃から興奮。そして当日、メンバーは客席内通路から現れ、観客とハイタッチを交わしながらステージに進むというサプライズな登場の仕方で、もうそれだけでホール内すべてが湧き立ちました。それにもまして、2020年からのコロナ禍からもすっかり日常を取り戻しつつあるのだなぁと実感したものです。
11月の河村尚子さんとアレクサンドル・メルニコフさんによるピアノデュオ、小さなホールの親密な空間での濃密な1台4手の連弾などが素晴らしかったのも記憶に新しいところです。

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 * * *

お芝居に触発されて読みました、高橋源一郎さんの「日本文学盛衰史」「今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇」や、
スピルマンさんの「シュピルマンの時計」、今手に取っています当のシュピルマン氏の「戦場のピアニスト」などを別としますと、買ってから途中で放り出しもう何年も置いたままであった、島崎藤村「夜明け前」を第一部から改めて最後まで読み切りましたのが今年の最大にして唯一?の収穫。時代背景・文化背景をウィキペディアなどネットで拾いながらで、それでなくとも読むのも遅くなってかなり時間を要しました。
この頃は映画やテレビドラマなども倍速視聴するとか、タイパ(いやな言葉です)などというものがもてはやされる時代に、そうではない時間を持ちたい、と私は願います。とは言え・・・、いやはや長かった。

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 * * *

まもなく2023年も暮れゆこうとしています。
この同じ時間を共有するすべての人々が
優しい気持ちで安寧に新しい年を迎えることができるよう願ってやみません。

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大阪府箕面市での2023年の日没
幸い夕方から天気も回復し
この後山並みに掛る雲間に隠れていきました
  1. 2023/12/31(日) 18:10:39

残暑お見舞い申し上げます 2023

残暑お見舞い申し上げます

苛酷な暑さの日々です
10年に一度の暑さとか・・・
40度近い気温に ここは日本?と思ってしまいます
32-3度の気温に 暑い暑い と根を上げていた頃が懐かしい

数日前8/8に立秋を迎え暦の上では秋ですが
今日の照り付ける日差しをみてもまだまだ秋は感じられません

九州地方では台風6号で大変な雨 お見舞い申し上げます
近畿も今週末から来週にかけては台風7号が来そうな気配です
お盆でお出掛けの方々も多いと思いますが あいにくの天候となりそうです

先頃 立秋を迎えるぎりぎりに暑中見舞いはがきを投函しました

今年は 東京国立博物館 と 迎賓館 の2案作成してみましたが
実際に投函しましたのは 東博 の方の図柄です

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暑さ 台風 そしてまたじりじりと増加にあるコロナ感染
皆さまどうぞお気をつけて この夏をお過ごしください

  1. 2023/08/11(金) 10:26:16

京都迎賓館

東京の赤坂迎賓館に行きながら、地元関西の迎賓館に行ったことがないというのも片手落ち・・・
完成してから 「機会があれば」 と思いつつ延び延びになってはや何年?
とうわけで重い腰を上げてようやく京都迎賓館に足を運びました。

迎賓館赤坂離宮は洋館も和館も建築が主役の趣きですが、こちら京都迎賓館は建築はあくまで黒子に徹し、見学の解説ももっぱら美術・工芸・調度に重きを置いたような印象です。しかし何といってもこちらの主役は庭 (と建物との関係)、それに尽きると思います。

京都御所の一角、御所のそれに対しやや現代化された築地塀で囲われた京都迎賓館、見学者用入り口を入り玄関前の前庭は石張り舗装のドライで現代的な空間で賓客用の門のみが伝統的な印象です。築地塀や門は御所に合わせて瓦葺とされていますが、中の建物はすべて金属板葺の柔らかなむくりを持った入母屋造り、軒先を平葺として平滑直線的な現代和風の表情です。
それにしても軽やかな振るまいの屋根にあって、この玄関庇の跳ね出しの大きなこと!天井面も美しい杉板で仕上げられ軽やかに浮いた如くですが、この天井の裏側で構造がどれほど頑張っていることやら、です。そして玄関扉、唖然とする欅の一枚板の扉です。
建物に足を踏み入れれば視線の先、正面には庭が拡がりますが、足元と欄間のみで庭を感じさせその姿は紙障子で隠すという演出。
京都迎賓館はこの庭園を囲む構成が取られ、庭の多くが池とされています。池の中程に廊橋が架けられて東西の建物をつないでいます。どの部屋も、あるいは廻廊も、庭園・池とともにある造りです。

それぞれの空間はまさに贅を尽くした素材と目を奪われる技の美術・工芸で設えられています。ひたすら裏方に徹しつつ、これらを存分に活かしきるように配していく建築というのも大変なことです。目立つことでもして主役とするような設計の方がどれほどわかりやすいか、と思います。しかもかつての数寄屋と異なり、大柄のあるいは大勢の外国人をもてなさないといけませんのでおのずと伝統的な和のスケールからは逸脱し、現代の建築環境に則した様々な設備も分からぬように仕込まなければなりません。
次から次へと人々の目を奪う美術・工芸・調度の数々よりも、目に触れぬようにと気を配られた設計と技術にこそ眼を注ぎたい京都迎賓館です。

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見学の際の受付場所 清和院休憩所
木造の柱をガラスの壁面で覆っています
耐久性を考えればそうなりますが
私としては柱が外に現れてほしい

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京都迎賓館の築地塀
御所の塀とは異なり五本の白線はなく、スレンダーですっきりしたプロポーションです
写真左手の係員が立つところが見学者の入り口です

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こちらが賓客用の正門

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敷地内に入って前庭から見返した正門

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迎賓館の正面玄関・車寄せ
写真はかなり広角で歪んでいます

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正面玄関・車寄せの下から見返した様子
この跳ね出しに驚かされます

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玄関扉
見事な欅の一枚板
取手も見惚れる工芸品です

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玄関扉を一歩入った玄関の間
賓客の訪問の折には正面に壮麗な生け花が飾られます
障子の上下が透かされています

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池を主とした庭園を囲むように迎賓館は建てられています
池に接する建物は水面から浮かせた造りとされています

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庭の中程に架かる廊橋を見る
池の水深は廊橋の南北で異なっています
廊橋の天井板には遊び心あふれる細工が施されています

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池の片隅には舟入が設けられ 賓客を舟遊びでもてなします

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桐の間の前は池を隠して別の趣きの庭としています

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庭を巡る廻廊には摺り上げ障子が建てこまれ
水面を切り取って見せています

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足元と共に欄間も透かされ
水面からの反射で天井を照らします

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別の廻廊では摺り上げ障子ではなく
紙障子自体を大きく浮かせて建て込まれています

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桐の間
やはり畳敷きのこの部屋が私には最もよく思われます
座卓といい畳といいびっくりするものばかりです

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桐の間
天井を卍に組んで変化をつけていますがとても神経の行き届いたものです
右手の欄間の細工も息をのみます
右手の部屋が時には舞台ともなるそうで
天井に演出用の照明が巧みに組み込まれています

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藤の間
まさに迎賓館の名にふさわしい華やかな大広間

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その藤の間の天井
凝りに凝ったと言いますか・・・
電動昇降するそうです

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夕映えの間
壁画で飾られた東西の壁面は可動式で部屋を分割使用できるそうです
わざわざ分割することあるのでしょうか・・・
天井がこう明るいのも和の空間らしく感じませんが 用途上やむを得ないか・・・


京都迎賓館
竣工 2005年
設計 日建設計

  * * *

ところで
京都迎賓館といえば、写真家の村井修先生が晩年に撮影され写真集として出版されています。
何度も何度も京都を訪れひたすらシャッターチャンスを待ったであろう写真の数々、頁を繰ればどれほど先生が心血を注がれたかが伝わってきます。
あとがきに記された
「刻一刻と変化する時空に漂う“移ろい”を見出し捉える」
建築や庭というものは、壁や屋根あるいは樹や土などの物理的な実体ではなく、それらが複合して醸し出す状態・気配のことですが、頁からはその気配が立ちのぼってくるようです。

kyotogeihinkan murai
  1. 2023/06/29(木) 14:41:38

新緑の箕面大滝

先の連休中は特にどこにも行かず・・・
唯一好天に誘われた夕暮れ、ふと気が向いて箕面大滝まで散歩した程度でした。
夕陽に染まった箕面の山
日ごとに濃さを増す木々の緑
多くの行楽客は既に帰ったあとで夜のライトアップにはまだ早く、ちょうど人が少なくなった折で、山の中に入ると気持ちがリフレッシュします。

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瀧のしぶきを顔に感じ、滝道の帰り道
ねぐらに帰るところか、お猿は山の斜面に
そして川の中を覗けば60-70cmはあろうかという悠然としたオオサンショウウオ
いずれも国の天然記念物に指定されています。
大都市近郊でありながら、街中から少し歩いただけで目にする箕面の自然です。

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街中を流れる箕面川ではホタルが数多く舞い、事務所からの帰路、橋上からもしばし明滅を楽しみます。
大切にしたい人と街と自然です。
  1. 2023/05/15(月) 18:39:44
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