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木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

みんなの森 ぎふメディアコスモス と 墨会館

お盆で愛知県に帰省、その折に建築巡り

みんなの森 ぎふメディアコスモス

つい先日オープンしたばかりという伊東豊雄さんの設計の岐阜市立図書館を訪れました。
最初に外観を見て、そして1階を拝見して・・・
???
けれども2階に上がって印象は一変
うれしくなって隅々まで歩き回り、椅子にソファに腰を掛け、テラスにも出てみたり・・・

人の居場所があります
優しく柔らかく温かく・・・心地よく包まれる空間があります

図書館って本のための建築であり、ひたすら書架が並び、知の殿堂みたいなありがたい施設だったのですが、ここはまさしく人が主役
いったい館内には何席のソファ・椅子・机があることでしょう?
あらゆる場所にそれぞれに異なった趣きでさまざまな場所が用意されています。お気に入りの場所がいくつもいくつも見つけられそうです。
実際夏休みに入って、あちこちのテーブル席で勉強をする小中高生や、雑誌や本に没頭する市民、つい心地よくうとうとする人も、それぞれの人がそれぞれに場所と時間を見つけられる、そんな図書館。
この空間を特徴付けるグローブと呼ばれる天蓋、それが木の格子組の波打つ天井から吊り下がり、(というよりもふわりと浮き上がり、という印象です)、

さまざまな居場所をつくり出しています。膜は一つ一つデザインもサイズも異なっています。
このグローブのエリアとエリアの合間を流れ渦巻くように書架が配置されています。家具はすべて木質系。

それにしてもこの空間、構造というものがほとんど意識されない。外周部はすべてカーテンウォール、繊細で透過性の高いガラス面。
主体構造はランダムに配置された鋼管柱だけだと思います。耐火塗料が塗られているのでしょうか、とても細い。
所々にRC打ち放しのボックスが配されてもいますが天井とは縁が切れています。
グローブも、膜を成型するためのリングが水平に設けられていますが、鉛直方向には一切骨はなし、吊られているだけなのでしょうね。提灯のようなもの?

そういえば岐阜は提灯の産地で、かのイサムノグチの提灯シリーズもメイド・イン・ギフでした。

豊かな時間豊かな場所、それを思い思いに得られるそんな図書館です。

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media-cosmos011.jpg1階エントランス
media-cosmos012.jpg1階市民活動交流センター周り
左手に2階の格子組の屋根天井の実物が展示されています
media-cosmos200b.jpg2階へのエスカレーター
media-cosmos202.jpgmedia-cosmos201.jpg
各クローブの文様は、幕のデザインを簡略化したものです館内サインはとても分かりやすいもの
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media-cosmos205.jpgメインのカウンター
media-cosmos206.jpgクローブの内部は様々な家具で場が設えてあります
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media-cosmos210.jpg天幕内部
media-cosmos211.jpgテラスとその脇のAVコーナー
media-cosmos212.jpg1階エントランス正面にはガラス張りの閉架書庫
実はこの書庫、「本の蔵」とネーミングされて公開、
2階図書館からは自由に入って閲覧できます

みんなの森 ぎふメディアコスモス 公式サイト
http://g-mediacosmos.jp/

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最新の建築に触れた翌日は古きを訪ね・・・

丹下健三が、香川県庁舎と同時期に設計した 墨会館、現在は一宮市の小信中島公民館として再生され、昨秋オープンしました。
以前のブログで触れたことがありましたが、念願かないようやく訪問。

丹下健三のこだわり、というものがプンプン感じられます。
寸法・割り付けに対する徹底
1階部分の屋根と外壁とのとことんまでの縁切り(多少の、というよりは随分の構造上の無理を承知で・・・)

閉鎖的な外観は、RC打ち放しの基壇部に粗い吹付の壁面、成を抑えたスリットを挟んで杉仮枠RC打ち放しの屋根、コーナー部は屋根がピン角に対し、基壇・壁面部はアールが取られ所々にポツ窓、要塞を思わせる外観。外壁頂部スリットの雨水排水のために数m置きに設けられたガーゴイルも、その印象を強めています。
そんな壁面のうち北側だけは四角いテラコッタブロック、通行人の目線より上は有孔のブロックとなっていて光と風を建物内に導いています。
2階はガラス張りの壁面に大きく跳ねだした庇、外観上はここに梁のダブルビームが現れています。
建物の構成は、中庭を挟んで事務室と集会室が向き合う形。そして事務室の中庭に面する開口が特徴的なものでした。
スチールの大きな引違窓、その引違窓の一つ一つに樹脂版による上げ下げの、いわば雪見障子といったものが組み込まれています。樹脂版も上下で若干色が異なっています。樹脂版の黄色味は経年変化による黄変がかなりあるのでは、と思いますが、竣工当時はどんな色合いだったのでしょうか?
香川県庁舎と同時期の設計ですが、こちらは窓回り足元は浮かせる処理はせず、サッシュ立上り・巾木・換気グリル・扉キックプレートと全ての高さを揃えて処理しています。

2階は今後の利用を行わない前提で、現行法規をクリアしてのコンバージョンでした為、仕上げも含めてオリジナルの姿が残されていました、壁面いっぱいの堂々たる造り付け家具は香川県庁舎でも見たような造り、無垢の板の厚さに驚かされます。階段や造り付け家具の欅の厚板に対して、天井のダブルビームの間を埋める板はラワン、なんでも当時はラワンも貴重な材だったのだそうです。不思議ですね・・・

それにしても、これだけオリジナルが残されながら、置き家具がすべて残らず、コンバージョンの折に売却処分されてしまった、というのは、とても残念・・・。一宮市もここまでして丹下建築と意識して文化庁と協議をしながら再生活用を図ったのは素晴らしい判断だと思うのですが、それにしてはなぜ故の軽率な処分、片手落ちと言わざるを得ませんよね・・・

中庭を挟んで対する集会室もまた、とても見応えのある空間でした。
とても丁寧に時間をかけての解説もありがたいものでした。

sumikaikan001.jpg外観
sumikaikan002.jpgエントランス部
sumikaikan003.jpg北側のテラコッタブロックの壁面
sumikaikan004.jpgエントランスピロティ
ブロックの向こうは中庭
sumikaikan005.jpg中庭
sumikaikan006.jpgエントランスの吹抜階段ホール
sumikaikan007.jpg透過性のある欄間
足元周りの処理も見て取れます
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 旧事務室の中庭に面する開口 右手の間仕切り壁は今回のコンバージョンで設けられたものですそれぞれに上げ下げの樹脂窓が組み込まれています
sumikaikan010.jpg2階会長室
豪壮な造り付け家具
欄間はあくまでも透過性を持ち
巾木周りは厳格に高さ統一しています
sumikaikan014.jpg2階廊下の柱・梁廻り
ダブルビームと柱幅の関係が見て取れます
スチールサッシュ方立見付と天井の無目も
厳格に揃えられています
全てがこんな具合です
sumikaikan011.jpg2階ベランダ
sumikaikan012.jpg集会室
小梁も少なく構造は結構飛んでいます
sumikaikan013.jpg集会室
扉も壁も縦格子です
ここでも壁と屋根とは完全に切り離されています
sumikaikan015.jpg集会室ロビー
構造上の要求からか、ダブルビームとなっていない大梁が
一本ありました
(柱の右側の部分 かなりのスパン飛んでいました)
補助的な柱がグリッドを外れて立っていたり、
そこにあたりまえのような小梁がついていたり
その一方でコーナー部では徹底して屋根と壁の縁を
切って、かなり構造的に無理をしたり・・・
ここで見て取れるように、サッシュラインまでは全て片持ちです
奥の方に見えている柱はエントランスピロティ部の構造
建物は、事務所棟+エントランスピロティ+集会室棟 の3つの部分に分かれ、構造的にはすべて分離されています

様々な葛藤の感じられる部分です

公民館ですので随時見学は可能なようですが、見学に行かれる方は必ず予約を!
2階へ上がったり、建具などの開閉仕組みを見せていただけるのは、予約者限定です。
このような立派なパンフレットももらえます。

sumikaikan016.jpg

国登録有形文化財「墨会館」 一宮市ウエブサイト
http://www.city.ichinomiya.aichi.jp/division/gakushu/kouminkan/26/sumikaikan/sumikaikan.html
墨会館(すみかいかん) 文化財ナビ愛知
http://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/yukei/kenzoubutu/kunitouroku/1327.html
  1. 2015/08/15(土) 19:03:50
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