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木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

如庵と芝川又右衛門邸

先日、愛知県犬山市へ茶室如庵と旧芝川又右衛門邸を訪ねてきました。

有楽苑内にあります如庵は織田有楽斎が建てた茶室で国宝茶室三名席の1つです。随分以前に見学した折には躙り口から内部を覗き見たのみでしたが、今回は月に一度の内部特別見学会に申し込んでのもの、茶室内に入室して丁寧な解説を頂いてのものでした。
先に旧正伝院書院内にて概要の説明を受け、如庵のたどった数奇な運命に想いを馳せます。建築は土地に固定したものにもかかわらず、こんなにも度々移築され、400年を経ていまここにあることに驚かされます。
いよいよ水屋から入室。二畳半台目、床に正対して座りますと間口一間半に対して奥行わずか一間ですので、床が非常に近い。その奥行の中央に中柱が立ち、塗り壁ではなく杉板で手前座と隔てられ、その板は丸く火灯形に刳り抜かれています。そしてその先に名高い斜めの壁があります。なんという奥行き感!
入室した直後はとても暗く感じた室内でしたが、しばらく茶室内にいますとじきに目が慣れてきて、そしてすべて高さを異にした5つの窓によって、思いのほか室内は明るく感じられます。さらに掛込天井部分の突き上げ窓を開けますと、一気に室内が明るくなりました。しかしこの茶室の魅力はやはりほの暗さの中に・・・。外部から細い篠竹をびっちりと打ち詰めた二つの窓、竹と竹とのわずかな隙間を通り抜けた明かりが縦に縞模様に障子に映り込んでいるのですが、わずかな隙間が微妙な屈折を呼び込むものか、その陰影が青から紫へと色を帯び、えも言われる美しさ・・・見学者の口から一様にため息が漏れます。これが「有楽窓」と呼ばれる窓。解説の方によると天候などの条件に左右され、この時のように美しく色が出ることはまれなのだそうです。もちろん濃淡のみでも十分すぎるほどに美しいのですが、とてもよい機会に恵まれました。

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如庵外観
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杮葺き片入母屋造り 左手の土間庇内に躙り口を設け、正面外観に見せない配慮で端正な姿です
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復元された元庵
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如庵と同じ有楽の作と伝えられる元庵茶室ですが、なんともまあこの振幅・・・自由闊達ですね!

如庵室内は屋外からも含め撮影禁止ですので、内部は下記をご覧ください。
http://www.m-inuyama-h.co.jp/urakuen/joan/
待庵も如庵も入室見学させて頂きました。残る密庵、見れないものでしょうかね・・・

 * * *

今回のもう一つのお目当て、明治村内に移築された芝川又右衛門邸、こちらも見応えありました。
西宮市甲東園に明治44年(1911)に建てられた住宅、というよりも接客などのための別邸であったようです。1階サロンでは関西の財界人とタカラジェンヌがダンスに興じていたのだとか。
設計は当時京都工等工芸学校図案科主任で、後に京都帝国大学建築学科の創設者となる武田五一。芝川又右衛門は大阪淀屋橋にあります有名なレトロビル、芝川ビルのオーナーでもありました。阪神淡路大震災で損傷を受け、明治村に移築されたものです。
芝川邸はなんとも不可思議な和洋混在の建物、いかにも武田五一らしいと思います。この建物は特に天井が豊かで、網代を基本に格子に張ったり杉板天井と線状に張り分けたりと、どこを見ても退屈な天井がありません。浴室は換気口を豊かな文様に刳り抜いています。ベランダや2階高欄の手すりなどもセセッション風であったり、そこに和のモチーフが組み込まれていたり。そしてなんといっても特徴的なのが、壁の意匠。しっくり塗りに手仕事で一つ一つ渦巻き状にひたすら一面にひねり模様をいれたその壁に、玄関回り屋外は銅粉を塗り、屋内階段室は真鍮を塗ったのだとか。まさに黄金の階段室、金ピカ!恐れ入りました。

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奔放!な外観
石積み基壇の上にスパニッシュ風の洋館ながら、数寄屋風とも山小屋風ともいえる吹き放ちのベランダ
2階の出窓はいずれも和室のもので数寄屋風
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出窓持ち送りの板は寺社を彷彿させる刳り形
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背面
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ベランダ 数寄屋風の庇ながら、柱頭の持ち送りや手すりの意匠は洋風の洒落たもの
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玄関・ベランダ部の外壁と雨戸 銅を塗り込んだという手ひねりの壁が圧倒的な存在感
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玄関扉上欄間のガラスは日本古来の矢絣をイメージさせるもの
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1階エントランス・階段ホール
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真鍮を塗りこめたという手ひねりの階段室壁詳細
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玄関ホールのベンチ 鋼管柱は移築の際に現行基準に合わせるための後補
ステンドグラスの線材部分は白く仕上げられ、夜間も図柄が浮かび上がるようになっています
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2階階段ホール
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1階のサロン
ダンスホールとしての利用から、周囲壁面にベンチが造り付けられています
腰張りも網代
玄関に通じる右手扉三方枠の意匠は微妙に対称を外し照明を組み込んだとても美しいものでした
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浴室天井の換気口 浴槽は檜
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2階座敷 床柱は変わった南洋材(樹種の説明を何度も受けたのにメモせず忘れてしまいました・・・)
床框は黒の漆塗り 保護板で覆われています
天井は網代と杉板を交互に張ったもの
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和室押入に組み込まれた暖炉
襖紙は型押しの唐紙
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四帖半の和室は堂々と巾木付き
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その出窓 手摺の意匠が和とも洋とも・・・
もっともハート形の刳り抜きは、日本古来の「猪の目」で、可愛らしい洋風のハートを混在させたというわけではありません
前の外観写真を見れば持ち送り板にも二か所刳り抜かれているのがわかります
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猪の目模様は随所に見られました

明治村公式サイト内 芝川又右衛門邸
http://www.meijimura.com/enjoy/sight/building/3-68.html

 * * *

明治村では
西園寺公望別邸「坐漁荘」、この美しい外観に見惚れました。ずっと立ちつくし、写真を撮るのも忘れる始末。内部応接の意匠も素晴らしい。でも芝川邸で時間を取り過ぎ、坐漁荘をじっくり見ることができず残念。芝川邸やこの坐漁荘などいくつかの建物は、時間の決まったガイドツアーのみで、個人の自由見学ができないのでした。そんなこと案内パンフレットにもウエブサイトにも書いてなかったと思うし、以前はそんなことなかったと思うのですが・・・
残念、またの機会に改めて

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この外観の美しさに立ちつくしてしまいました
塀と切り妻の重なり、手前の寄棟と正面の大屋根 複雑ながら見事な奥行き感とリズム
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上の外観を右手側に廻るとこのよう
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畳敷きの玄関小間
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この応接の天井と正面壁面の意匠には惚れ惚れします

フランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテル
かつて移築直後に勇んで見に来たことがあるのですが、その際にはただもうがっかりして、ほとんどろくに見ることなく帰った記憶があります。玄関部分のみの移築で腕をもがれたような痛ましい姿と感じ、また、新たに作り直されたテラコッタなどが妙におもちゃっぽく見えて幻滅してしまったのでした。その時からも既に30年余りが経過し、相応に馴染みが出てきたようにも思いますが、今回はそのような移築とか再生とかの部分には意識を向けず、ただライトのつくり上げた空間構成のみに目を向けるとやはり素晴らしい。ライトという人は本当に魔法使いのように高低、空間のボリューム操作を行いますね。基本的にはとても小さい/低い独特の親密な空間尺度、そこに非対称で豊穣な装飾が豊かな素材感をもって施されるのですから、その空間が心地よくないはずがありません。うまいなぁ・・・

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こういう窓の桟割りが真骨頂 金色のモザイクを散りばめるのもライトらしくてとても効果的
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大谷石とテラコッタ
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エントランス正面の吹き抜けホール
柱の垂直は透かされたテラコッタによる光の筒
各階の天井高さも腰壁もとても低く抑えられています

 * * *

現存する最古(?)ともいわれる天守閣、国宝犬山城
その城下には古い町並みも残ります。
屋根の大きさに驚かされます。

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犬山土産 濃いお酒でした・・・

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  1. 2015/09/20(日) 17:31:44
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