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木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

西脇小学校と西脇市民会館

秋の恒例行事、日本建築学会近畿支部の建築見学会に今年も参加してきました。
今年は、西脇小学校と西脇市民会館
ちょっと遠い・・・と躊躇しましたが、どうせ遠出となるのならば箕面からのルート的には絶好か・・・と、午前中に箱木千年家~浄土寺浄土堂を巡るという、いささか欲張りコース!

箱木千年家:何といっても茅葺の屋根の大きさ厚さと軒の低さ、そのプロポーションに目を奪われます。何しろ私も腰をかがめてくぐる高さ、軒下に立つと目線あたりが軒の高さです。ですから板敷の室内に上がるとほんとうに視界が低く抑えられ、かつ暗い。低い外光を反射する床板の、手斧ではつったざっくりした仕上げも味わい深い。壁の上部は割り竹を縦に細かく詰めたもので、隙間から漏れる僅かな光も美しく、土間に現れた素朴な小屋組み、塗り残しの開口など、見ていて飽きません、600年!近く前の素朴な住まいです。

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浄土寺浄土堂:随分久しぶりに訪れたら、前面が観光化(?)していて驚きました。堂にもちゃんと受付の方が常駐していて・・・以前来た時には締め切ってあって別のお堂までお声掛けしに行った覚えがあります。しかし、だから西面の格子からも外光が差し込んでおり(残念ながら曇天の午前中でしたので赤い夕陽というわけにはいきませんでしたが)、以前は閉じたままの真っ暗の堂内でしたのでお願いして開けてもらいましたものね・・・。
素朴な外観、対する朱のカチッとした堂内はもちろん変わらず、一歩内部に足を踏み入れる途端にやはり打たれるものがあります。中央部の4本のスクッと立つ柱と、コーナーで三方に延びる直線的な虹梁、それを支える段状に組まれた斗供、息をのむ空間です。

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堂内は撮影禁止となっておりました・・・


さて、本題・・・

西脇小学校:いやはやびっくり!素晴らしい。建物が当初のままに現役の学び舎として変わらず使い続けられている!
デザインの基調はセセッション風、ということで、メインの建物中央部の塔やその下の玄関部などに目を惹かれますが、何よりも真っ先に驚いたのが、石綿スレート張りであったこと!下見板風の壁面はスレート平板を重ねて葺いたもの、そして中央部の塔の垂直を強調した意匠部と1階腰部とには波型スレートを縦張りに。板が痛んで後日の改修?と思えば、これが当初からで設計者が耐久性などから意図して選択した材とのこと。
内部も、すっかりそのまま。窓も木製のままならば、廊下に面した扉などももちろんオリジナルのまま、格子状に組まれた枠材などが色の違いや高さの変化などで効果的な壁面を作り出しています。そしてこの学校が素晴らしいのは、正面メインの建物だけではなく、一年後に建てられたほぼ同様の棟が二つ、二階建ての木造校舎合計3棟が並行して並び、その全てが現役できちんと使い続けられていること。校舎が一つの群となって、それが山すそに統一的な学び舎の景観を保っています。
実は解体取り壊しの危機が近年にあり、それを知った卒業生の女性の方が東京在住ながら保存に向けてとても理性的に動き、全棟保存に結びついたとのことでした。教育環境の向上とか耐震上子供たちが危険とかそのようなことを大義に、なんとなくそれっぽく受け継いだようなデザインでお茶を濁して取壊し/建替えとなるのが世の常、仮に保存が実ったとしてもメインの建物のみが記念碑的に残されて万々歳、他の2棟は高く建て替えて教室はそちらに詰め込む、といったところでしょうけれど・・・。この女性の方にも東京からお越しいただいて、この学び舎の一教室で授業さながらお話を伺うことができました。また、設計者のご子息の方も建築家で、オリジナルの図面の写しをお持ちいただきそれを基に解説くださいました。

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西脇小学校
設計 内藤克雄
竣工 1936-1937


西脇市民会館:なんとこちらには設計者の方が自ら登場、当時のデザインの潮流=日本的表現からの脱却へのご苦労など、貴重なお話を伺うことができました。そのようなことを伺った眼で見ますと、いろいろなことに気づかされます。正面外観は端正な近代建築、といった趣きですが、背面大ホール舞台裏あたりの外観や、エントランスホワイエのインテリア、そして設計者が 「なんとかやれたのでは」 と自負された大ホール内部のインテリアなどなど、興味深く拝見。向かい合って建つ市庁舎も同じ設計者によるもので、行政棟と議会棟を別棟として、市民と行政と立法の3つがそれぞれ独立し囲い込む形で広場を形成する、という都市的視点にもうなずかされました。それにしても設計の根津氏、当時31歳とのことで、並々ならぬ力量に脱帽いたしました・・・

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西脇市民会館
設計 根津耕一郎
竣工 1966


今回の見学会は学会の方の専門的な解説に加えて、設計者自ら、あるいはそのご子息や保存活動の当事者など、生の声が聴けたとても実のある会でした。皆様にお礼申し上げます。
  1. 2015/11/13(金) 06:48:12
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コメント

木村様

 お久しぶりです。

 箱木千年家は大阪在住の時に訪れて大分年月が経ちました。浄土寺も2回くらい行った記憶があります。初めて遠くから見た、そりの無い屋根のシルエットは篠原先生の白の家を見るようでした。

 根津先生は、ご健在なのですね。(スイマセン)某ハウスメーカーと当時勤務していた建設会社と共同で参加したコンペのアドバイスをしていただいたことがあります。万博協会のビルしか作品として知らなかったのですが、「建築家というのはこんな感じなのかなあ!」と遠くで見ていました。
今となっては、どれも懐かしい思い出です。

 東京は御所も離宮もないので、六義園のライトアップでも見に行こうと思っています。
  1. 2015/11/27(金) 13:38:12 |
  2. URL |
  3. もりた #-
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます

もりた様

ご無沙汰しています。
コメントありがとうございました。
すっかり寒くなりました。今日から12月ですものね・・・
ということは、いよいよ大丸心斎橋も今月限り、世の経営者の方の判断というものは一建築人からは全くもって推し量れませんが、あれを取り壊すかなぁ???あの建物であるからこそ、老舗百貨店の格式であろうと思うのですが・・・
今月はせいぜい大丸心斎橋に通って眼に焼き付けておくこととしましょう!

ブログに、と思いつつ書けていませんでしたが、村野さんの浪花組とフジカワギャラリーを先頃の大阪市のイケフェスで見てきました。フジカワよかったです!

それでは時節柄どうぞご自愛ください。
  1. 2015/12/01(火) 18:25:36 |
  2. URL |
  3. tetsuyakimura #-
  4. [ 編集]

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