建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

京大高槻農場の建築群

阪急電車に乗って大阪から京都に向かいますと、高槻駅を過ぎたすぐ左手に、そこだけ一帯が別世界、あたかも大正時代のユートピアそのままのような佇まいが目に入ります。南北軸一直線に延びる並木道の正面には、赤い屋根の可愛らしい家屋・・・
いえ、住宅ではないのですが、「可愛いお家」 に近いスケールと雰囲気
それが、京都大学高槻農場なのでした。
いつも車窓から目にしては、あれはいったい何の建物だろう?一度見に行こう!と思いつつ・・・
実を申せば近くにある大阪医大の一部施設とずっと勘違いしていました。大阪医科大学別館はヴォーリズの設計ですし、ヴォーリズの 「吾家の設計」 の表紙絵の雰囲気を漠然と感じて (見比べてみれば、全く似ていないのですが・・・頭の中なんて実にいい加減なものですね・・・) なんとなく勘違いしたまま思い込んでいた次第、お恥ずかしい。しかもまさか自分の出身校の施設であったなんて・・・

その高槻農場がこの3月に移転することとなり、本館と附属屋の見学会がこのたび催されたのでした。
既に移転に向けて周辺では整備工事が始まった模様で工事用仮囲いが目に付き、また、季節柄アプローチの並木は葉っぱがなく、いわゆるユートピア的な佇まいは薄れていますが (しかも途中からは結構な雨で・・・)、しかし、いい雰囲気です。
本館は1930年建築、設計は京大営繕で、大倉三郎ではなかろうか、という話しでした。
吉田のキャンパス内の大倉三郎設計の建築もいくつか紹介されましたが、農学部のバンガロー風の建物、学生のころ不思議な印象を持って眺めてましたっけ・・・思い出します。
この本館建物は切妻屋根の平側正面側にも非常に緩勾配の屋根型を見せ、6連の円形アーチ窓と化粧の柱型梁型で、ピクチャレスクな可愛らしい外観をまとっています。
その下、メインエントランスの庇は山小屋風というか方杖も垂木も装飾的に彫り込みが豊かです。
しかし私は正面よりも側面の出入り口のデザインに惚れ込みました。残念ながら庇は撤去されていましたが、出は小さくとも正面同様彫のある木材のキャノピーが付いていたことでしょう。

kyodainouzyo a001本館外観
kyodainouzyo a002主玄関庇
kyodainouzyo a003北ヨーロッパ民家風というか
彫の深い玄関庇の木部
kyodainouzyo a004東西にある脇玄関
庇を外された跡が見られます
垂木を受ける材も非対称に延び、
その端部にはやはり刳り形
kyodainouzyo a005アールをつけられた基礎部分
玉石張りの基礎と壁面との
見切りは左官の蛇腹にスクラッチタイル
kyodainouzyo a006階段の手すり親柱は逆円錐状
本館内部インテリアは
それほど特徴的なものは
ありませんでした
さすがに実直な研究施設です


本館もさることながら、周囲に建つ附属屋がそれぞれに味があって、なかなかによいのです!
本館はメインの建物だからシンボル的に、意匠を整えて造られているのですが、附属屋はあくまで実用本位、農機具の倉庫であったり、作物のためのあれこれであったり・・・。その機能の要求なのでしょうけれど、軒が深く、それを支えるための方杖が直截的に設けられていたり、不必要な軒高を抑えるためか、重心の低いプロポーションであったり、器具や作業の都合か腰までがRC造でその構造がそのままに外観側に表され、かつその天端は水仕舞いで当然テーパーが取られ、それが素直な意匠に結びついていたり・・・
とまあ、建築ってオカシナ作為なんて持たず、素直に実直に、そして丁寧に造っていけばいいのだな、と思わせる、そんな好印象の一群でした。

kyodainouzyo b001別館(旧研究棟)
妻壁を重ねた軽快な印象
kyodainouzyo b002エントランスの方杖
左右の崩し方が心憎い
kyodainouzyo b003その方杖は軽快とは程遠い・・・
kyodainouzyo b004内部天井
竿を正方形に組んだうえで
崩しています
室内にも方杖、
しかも天井割り付けお構いなし!
kyodainouzyo b005和室にも!
流石に方杖はありませんが・・・

kyodainouzyo c001農具舎
kyodainouzyo c002深い軒が印影ある外観を作っています
RCの腰や木製の軒蛇腹が
壁面を文節
kyodainouzyo c003軒を支える腕木
小屋組みは洋式のトラスです
kyodainouzyo c004円形の妻換気口

kyodainouzyo e001肥料庫
きれいなプロポーションでした
妻壁は細かく柱を見せ、
平側は正方形状の連窓
kyodainouzyo e002その入り口部分
kyodainouzyo d001加工室棟
縦長の窓も割り付けにこだわりがあり
上下を正方形、
それに挟まれて横長の嵌め殺し窓が二段



この高槻農場の施設群、今後の活用は未定のようでしたが、この敷地一帯が埋蔵文化財の遺跡地域ということで高槻市に移管し、遺跡公園のような形で整備され、建築もある程度残されるのではないか、とのことでした。
周辺に広がる果樹園・農地と南北に貫くあの長い並木道とともに建物群が残り活用されることを願っています。

* * *

ところで余談ながら
この農場で収穫される野菜や果樹などは販売されているそうなのです。
販売時間をお知らせする掲示板もありましたが、それよりも、出荷される作物を入れる段ボール、「京都大学農学研究科附属農場」 の銘がうたれ、しかも朱の 「學」 のマーク付き、入試シーズンなどにご利益ありそう!
キットカット や うカール と双璧をなす商品になるのでは・・・そんなネタまでこぼれた見学会でした。

kyodainojo siryo
当日配布の資料
とても充実した内容に関係者の方々の意気込みとご苦労を感じます

京都大学大学院農学研究科附属農場(京大農場)公式サイト
http://www.farm.kais.kyoto-u.ac.jp/index_farm.html

  1. 2016/02/14(日) 13:22:56
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