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木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

上方文化講座2016 「ひらかな盛衰記」

今年の夏は8月末から9月半ばにかけていろいろな物事が重なり、夏の整理がすっかりと遅くなってしまいました。
もう今は台風続きの秋、めっきり涼しくなりました。

さて、今年も夏の終わりの3日間、大阪市立大学文学部の上方文化講座を受講してまいりました。
今年の演目は 「ひらかな盛衰記」、義仲にまつわるお話しでした。
幸い図書館に岩波書店の日本古典文学大系があり、その巻51に全段収録されていたので大急ぎで読んで予習。

今年も昨年に続き初日第一講が 文楽案内 と題する概論で、今年年初にNHK-TVで放映された 「ちかえもん」 を例にとって、文楽の上演形態と芝居小屋の構造についてのお話し、これがとても面白かった。
私もこのドラマを毎回見ていて、文楽の上演の様子や小屋の雰囲気、特に屋根のない狭い土間にお客が思い思いに座って芝居を楽しむ様子を、その狭さ/親密さなどを興味深く見ていましたのでなおさらです。かんかん照りだったり雨降りだったら大変・・・などと思いつつ。
講義では、三人遣い・出遣いや床の有無、そして桟敷や桝などの客席の様子、客席上部への屋根の出現などを文献などをもとに考証を進め、ドラマと史実との一致/不一致が示されました。ドラマとしての見せ方と学問との立場の違いなどを感じ、特に私自身が建築にかかわりっていることもあって、小屋の屋根の変遷にはとても惹きつけられました。客席が大きくなっていけば梁間も増大し、防火上の要請より簡易な筵屋根から瓦葺に至れば屋根荷重も随分と増して構造上の負担も大きくなっていきます。工学上のみならず倹約令なども屋根の有無にあれこれからみ・・・
シェークスピアのグローブ座やスワン座・日本の能舞台などはとても似通った構造で、舞台と桟敷のみに屋根が掛けられ囲われた露天の濃密な客席、あるいはかつて村々に存在した農村芝居小屋などの開放的な雰囲気などを思い起こしながら興味深く拝聴、文楽の行われる内子座や金毘羅歌舞伎・出石永楽館などの小屋での観劇体験もなく、一度行きたいなぁ、などとあれこれ想いを馳せながらの愉しい受講。
帰宅して手元の劇場建築の本なども開いてみると、昔々読んだ 「劇場の構図」(清水裕之著) にはちゃんと人形浄瑠璃の小屋や出遣い出語りの記載もあるではないの!あれあれ・・・何も覚えてません。もう一度読み返しましょう。
ところで、床が当初はなく舞台奥の見えないところで太夫三味線が語っていたとのこと、一昨年の講座でしたか文楽は聞くものか見るものか、という話がありましたが、となると太夫三味線が隠れていた時分は、人形浄瑠璃は見るものでしたのでしょうか??

他には今年特に印象深かったものは 「箙の梅は紅か白か」 という講義。文学史上「梅」はもともと 「白梅」 であり、和歌・漢詩などで詠まれた梅が白か紅かが丁寧に解きほぐされ、そして源氏の白/平家の紅から、「源平盛衰記」 では景季が箙に差したのは源氏の白であり武勲を願う白梅であったものが、「ひらかな盛衰記」 ではあえて紅梅に変えられたその意図の読み解き、とても面白く、かつ、緻密な考証の過程に先の 「ちかえもん」 同様 「流石に学問だなぁ」 などと感じ入ったり・・・。このあたりの改変に込められた演出が、「源平盛衰記」 が軍記ものであるのに対して親子や男女の情愛などが描かれる 「ひらかな盛衰記」 ならではなのでしょうね。

それにしても、景季って何よ?ですよね。恋人の梅が枝に浮世のことを知らぬぼんぼんと言われるのも当然、というかよくもまあ愛想も尽かされず、ひたすらつくされるものです。まあ、子が子なら親もまた親で景時が的矢を射損じるくだりもお粗末な話し、その際の恩義で宇治川先陣争いを譲ったというくだりは景季も気の届く出来た息子かとも思いましたが、そんな気配りをつゆとも感じず武家の恥として切腹を命ずる景時・・・こんな親子が一の谷でちゃんと働くのでしょうかね?まあ、最期はしかり、ですが・・・。

技芸員のお三方のお話しに興味が尽きないのは今年も同じ。
今年は夏公演で井上ひさしさんの 「金壺親父恋達引」 が上演され、私ももちろん観に行って大いに楽しみました。演じた勘十郎さんからはこのお芝居の話しもいろいろと聞くことが出来ました。これまでこのお芝居は収録用のみとして先代の勘十郎さんと先代の玉男さんが遣われたそうなのですが、客入りでは今回が初めての舞台だったそうです。玉男さんが動かない金仲屋金左衛門を演じたのに対し、勘十郎さんは動き回る金仲屋を意図したとのこと、玉男さんの金仲屋も是非見てみたいですね。映像の記録が公開されるとうれしいです。

ところで勘十郎さん曰く、客入りで初めて舞台に上げるに際しての一番の心配事は・・・
この上演時間に対してこの料金、お客さん来てくれはるやろか??? であったそうで
うんうん、切符買うとき私も みじかーーー って思いましたし、お金払う段では もそっとまけてよ って思いましたもの・・・。
もちろん費用対効果といいますか観劇結果は満足で マル なのですけれど・・・うたた寝する間もなく、笑っているうちにあっという間に終わりました。
(ちなみに  「金壺親父恋達引」 の上演時間は 67分 で 金 4000円也
一般の芝居は二時間程度が主ですが文楽は普通はかなり長い! (かつ休憩が短い!)
例えば4月の 「妹背山婦女庭訓」 なんて通しで見ましたが、11時に始まって終わるの夜の9時過ぎ 対するお値段は通し料金で1万円 結構なコストパフォーマンス!)

実演では最終日の三業の芸、舞台のセットもなかなかに立派に整い、梅が枝を遣う勘十郎さんに源太を遣う幸助さんも加わって充実の舞台、魅せられました。

今年も濃い三日間でした。

kamigatakouza2016.jpg
  1. 2016/09/22(木) 13:30:01
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