建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

せとうち芸術祭2016

八月の初めにやっと六甲枝垂れを見に行き、その勢いで盆明けに直島に出掛けて、三分一博志さん設計の直島ホール見てきました

外観は巨大な入母屋の屋根のみが、盛られ植樹された基壇状の土の上に浮かんでいるよう、その屋根がまあなんと板葺で、入母屋の妻部がギリギリまで細く絞られています
内部に入れば、その屋根の形状通り裏面の天井側は全て漆喰でコーナー部ははっきりとした稜線を消すように塗りこめられています その巨大な白い天蓋のみが一切の壁なく僅かな柱のみで受けられている、その様が設計者のこだわりなのだなぁと感じ入ります
屋根の妻壁を風が吹き抜けて、それが屋内の空気の流れをつくり、上部に上がる暖かい空気を屋外に排出する、一方周囲の土盛りには風を取り入れる開口があり、それが床下を巡ってスリットから屋内に流れでる仕掛け 暑い暑い日でしたが、建物内ではごく自然な涼感を感じ取ることができます
建物周囲を巡る土間の三和土の素材感もとても美しいものです この土間には利用に応じて板の床を張れる仕組みとなっているのでしょう、そのための木材を受ける穴がポツポツ開いているのもリズムを作っています
そんな細かなこともありますが、ともかく要素をぎりぎり切り詰めて、ただ屋根があり天井がある、静謐な建物・・・
用途的には島に伝承する文楽を上演する舞台と床が設えてありました。普段はここで町民の方がバレーボールなんかもしていらっしゃるのだとか!

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隣接して建つ公民館はひとつの屋根が覆う下に独立して4つのボックス状の建物が卍形に建つもの、こちらもまた自然の風が抜ける心地よい空間でした

naoshimahall (11)すぐ後ろには石井和紘さんの町役場
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併せて三分一さんの設計の個人住宅 「またべえ」 も遠目に外観のみを拝見、この住まい、以前訪れた際にその塀の木と竹の織りなす美しさに思わず見とれた、その住まいの改修と増設でした やはりかなり美意識の高い方のお住まいでしたのですね

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直島でのお目当てはもう一つ、以前の芸術祭の折には既に予約受付終了で見られずに地団太を踏んだ内藤礼さんの 「きんざ」、今回は無事訪れることが出来ました 僅か15分ほどに限られますが、一人のみが案内され、土蔵の中で時間と空間を独占して体験できる贅沢な時間、素晴らしかった!
分厚く土を塗りこめた土蔵 四周足元のスリットからの光のみ 次第に目が慣れてくるに従って、作品も浮かび上がってきます
この土蔵のもともとの姿はどのようであったのか、作家が軸組も配列し直し、分厚く土壁も塗り直し、けれどもその壁は地面とは接することなくスリットが設けられて浮かされて・・・
けれどもそのスリットは空気の流れは呼び込まず、籠ってじとっと蒸し暑い感じ、蔵の中のひんやり感は感じられません
建築の中ではなく ああ、美術作品の中にいるのだな という感じがいたしました

kinza01.jpg外観の焼杉板張りと土塗り壁の取り合いや梁のあらわし具合なども美術家の美意識が表れる納まりです
kinza02.jpgこの焼杉板の外壁の足元がスリットとなって縁が切られ、ここから光が差し込みます


直島では、杉本博司さんの護王神社を再訪し、展覧会「直島建築」を見て、石井和紘さんの町役場で休憩し、藤本壮介さんのパヴィリオンを眺め、妹島さんの「海の駅なおしま」からフェリーに乗って帰ってきました

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そして日を改めて9月のはじめ、豊島へ

ようやくようやく訪れた豊島美術館、もうあまりに素晴らしくて言葉がありません
島の景観・環境と西沢立衛さんの建築と内藤礼さんの美術とが、もうほんとうに境なく混然一体となっています
設計の西沢さんの建築が先行し、このような架構・形状が計画としてはすでにあった後で内藤さんがこの場に作品をつくったそうですが、一体どちらが先でどちらが後かということなく、互いが触発してひとつの世界をつくりだした
ここでした感じられない、その瞬間にしか感じられない 時間と空気感

ひとつも押しつけがましいところなく控えめでありながらどうしようもなく存在感があり
あんなにシンプルでありながら、一瞬一瞬に異なる果てしのない多様な印象を紡ぎだしている
立つ位置 座る姿勢 風の動き 雲の流れ その時々で空間が作品が、様々な表情を醸し出します
天井の開口から吊るされたリボンの緩やかな動き 時として生きものごとく走る水滴 その水滴が床下のピットに吸い込まれ落ちる時のかすかな音
会期も終了間際で、館内には本当に大勢の人々が、年齢も国籍も様々な多くの人々が、思い思いの場所で姿勢で過ごしていましたが、それだけ大賑わいでも静謐さを失わない空間
いつまでもここで時を過ごしたい
また異なる天候気候でこの空間に身を置きたいと思わずにはいられない時間でした

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至福の時にも別れを告げてもう一か所
永山祐子さん設計の豊島横尾館へ
こちらの民家も土壁の脚元ではスリットを切ってありました
そんな細かなことよりも、建物自体も大胆に切られていますが・・・
横尾さんならではの強烈な暴力的ともいえる世界
いくつになっても新たな世界を切り開き 落ち着こうとか 納まろうとか には無縁の姿勢に脱帽

teshima (06)



三分一さんと西沢さんと内藤さんでこの夏もよい体験で過ごしました
先の上方文化講座の記事に続き、9月も終わりになってようやく夏休みの宿題を片づけつつあります

teshima (05)豊島の美しい棚田
豊島美術館と併せて復元整備されたそうです
setouchi001.jpg瀬戸内の穏やかな海と島々


  1. 2016/09/24(土) 14:27:42
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