建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

2016年を振り返って

2016年も暮れゆこうとしています

今年はなんだかあっという間に過ぎて行ってしまった印象です 振り返ってみても、もちろん個々の一つ一つの出来事はさまざまにありました けれどもその一方で、今年を代表する “これッ!” というものが思い浮かばない印象です
つまりはそれだけ平穏無事な一年を過ごした・・・
世の中を見渡せば、熊本の地震や先頃の糸魚川での大火災、米大統領選や英EU離脱など様々なことが記憶される一年ではありました
そのようななかで何事もないような日々の暮らしが毎日続いていくこと そのありがたみを思わずにはいられません

そのようなことを感じさせられることが今年なか頃に私個人の周りで重なりました
毎日をかけがえのない一瞬の積み重ねとして大切に紡いでいくこと
その一瞬一瞬の大切な時間をなお 自身ではなく他のひとびとを想い丁寧に費やしていくこと
そのような姿を見聞きし いろいろと感じさせられました
うつくしい時間を刻んでいく といえば綺麗すぎて実情はもっと複雑で苦悩に満ちたものではあることでしょう
けれども結果として うつくしく感じられる時を重ねていきたい と願います

 * * *

今年は夏に 「六甲枝垂れ」 を訪れ、そしてせとうち芸術祭で 「豊島美術館」 「きんざ」 「直島ホール」 などを見学してきました
いずれも言葉にはしづらい印象深い空間体験でした
その中でも特に 「豊島美術館」 は 豊島の景観・環境と 西沢立衛さんの建築と 内藤礼さんの美術とが もうほんとうに境なく混然一体となり 極限までそぎ落とされた原初の空間のなか 光と影と空気と水とが一瞬一瞬に千変万化の表情を見せ 空間の中での私の眼の位置毎に さまざまに異なる果てしのない多様な印象を紡ぎだす 建築というものを超えて こころとからだに触れてくる 空間 というものの得難いよろこび がありました
そこでしか感じられない、その瞬間にしか感じられない 時間と空気感

とくべつの仕掛けなんてなにもない
けれども
とくべつの仕掛けもなく とくべつのかけがえのない空間をつくり出す
そのためにはいったいどれほどのスタディーと技術サポートとエネルギーとが注ぎ込まれていることか と思います

teshima (01)

 * * *

相も変わらず今年もたくさん遊びに出掛けてきました
1月7日のお芝居 「ツインズ」 で幕を開け 12月23日のコンサート 「山中千尋 with ラズロ・ガードニー ピアノ・デュオ」 で幕を閉じました

風間杜夫さんと平田満さんとが顔を合わせた伝説の 「熱海殺人事件」
今年惜しくも亡くなった松本雄吉さん演出の 「レミング」
樋口一葉を描いた 「書く女」 「頭痛肩こり樋口一葉」
展覧会の絵 の演奏が印象深い 「カティア・ブニアティシヴィリ ピアノ・リサイタル」
不思議な夢を見た野田地図 「逆鱗」
三部作を連続上演した鄭 義信 「焼肉ドラゴン」 「たとえば野に咲く花のように」 「パーマ屋スミレ」 ・・・泣けます
小曽根真さんは チック・コリアとのデュオ ゴンサロ・ルバルカバとのデュオ そして橋爪功さんとの朗読劇 「テロ」
語りと言えば圧倒的な 白石加代子さんの 「百物語」
長塚圭史さんが今年の私の中では特に印象深く 「ツインズ」 「浮標」 「はたらくおとこ」 いずれもよかった
KERAでは 「8月の家族たち」 「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」 「キネマと恋人」
個性的な三女優による 「あの大鴉、さえも」 (大昔 秘法4番館 『かきに赤い花咲くいつかのあの家』 を観に行ったことを思い出しました・・・)
文楽では上手下手共に語り床を設けた通し狂言 「妹背山婦女庭訓」 (長かった!) 井上ひさしさんの 「金壺親父恋達引」 花道が使われた 「勧進帳」
展覧会では 「モネ展」 「ダリ展」 「森村泰昌展」 「藤田嗣治展」
立ち姿の美しい ヒラリー・ハーン 素足が印象深い アリス=紗良・オット 気さくなサイン会でした イザベル・ファウスト
その他にも書ききれないほどのお出掛け

しかし今年はこんなにもたくさん観たお芝居コンサートよりも観ることがかなわなかった 「蜷の綿」 に尽きるかもしれません・・・

熱海殺人事件焼肉ドラゴン逆鱗浮標はたらくおとこninanowata001.jpg


これらの公演の大部分の舞台となっています西宮北口の兵庫県立芸術文化センターは 本当に素晴らしい大好きな建築です
使われた材料もひとつひとつが味わい深く 表情豊かな煉瓦(タイルではなく!)張りの内外壁 花弁状の断面をもつPC柱は手作業の斫り仕上げが施され 杉板型枠のRC打ち放しは杉板の厚さを微妙に変えて陰翳を醸し出し ホール内装は壁床から椅子に至る無垢のマホガニーの色目も美しく豊かで気品に満ちています
階段手摺のスチールにはPC柱と同じ断面形が与えられ 無数が吊り下げられたシャンデリアと壁面のブラケット照明ともその取り付け方にも細心の注意が払われた美しく素朴なガラス玉
計画上もエントランスプロムナードから中庭をもつ共通ロビーを介して3つのホールへとスムーズな動線計画で 各ホールとも仕上げの美しさのみならず音響のすばらしさ 規模設定の良さと そしてホールでは何よりものトイレの充実 これは特筆ものです
芸文センター建物にL字型に囲まれた公園部分も街路からは植樹で程よく囲まれていつも人でにぎわっており 都市公園の大成功例と思います
今年他方面からの飛び火で名の挙がってしまった日建設計の設計です 残念ながら直接の面識はありませんが大学の二年先輩の江副 敏史さんのご担当 構造は関西国際空港の際に大変お世話になった多賀 謙蔵さんが担当されました
私などは大組織事務所の設計というとついつい冷ややかに見てしまいがちですが 大組織事務所の高い技術力と 実に血の通った細部にまで神経のいきわたった職人技的な設計とが幸福に結びつき 音楽やお芝居への期待と歓びに満ち溢れた素晴らしい建築です
昨年末に開館10周年の記念イベントが催されたところでまだ新しい建物という印象ですが 新年1月から4月にかけて大規模修繕工事に入るとのこと 企画運営からこのような維持管理に至るまで ハコと中身とがそれぞれに素晴らしいこの施設を陰ながら応援しています
改修なったホールで来年も多くの公演に触れられることを楽しみにしています

 * * *

今年読んだ本では
角田光代さんの 「坂の途中の家」 小川糸さんの 「ツバキ文具店」 などが心に残ります
三浦しをんさんの「あの家に暮らす四人の女」を読んだ勢いで谷崎作品をいろいろと読んでみた今年でもありました
手元にありました文庫本の 「細雪」 は表紙に市川崑監督で映画化された折の 岸惠子・佐久間良子・吉永小百合・古手川祐子の四姉妹それぞれの写真を配したもの 当時封切で見ましたがさっぱり覚えておらず 読後TVでたまたま放映されたものを見て改めて原作との差異など描かれ方を理解しました

坂の途中の家ツバキ文具店


 * * *

まもなく2016年も過ぎ行こうとしています
新たな一年を 切羽詰まるでもなく 惰性に流れるでもなく 自然体で肩肘張らず 日々の一瞬一瞬を 緊張感とゆとりとを併せ持ち 豊かに過ごしてまいりたい
そう願います

明年もどうぞよろしくお願い申し上げます
  1. 2016/12/31(土) 22:31:44
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