建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

東京建物巡り & 「足跡姫」 2017.02

野田地図のお芝居 「足跡姫」
観たいけれど大阪には来ない・・・
うーーん、ならば!   と思い立っての東京行き
とはいえお芝居見たさに平日お仕事うっちゃってはるばる東京に行くのも・・・
そんなうしろめたさを払拭するに格好の言い訳
“建物は来てくれない 行かなきゃ見れない”
という訳で、久しぶりの東京 びっしりと建物を見て廻ってきました 建築稼業ならでは・・・です

初日

東京駅に到着し まずは真っ直ぐ表参道へ
以前根津美術館を観に来た時には全く知りませんでした、お隣にカニングハム邸があるなんて!
そもそもが根津美術館の庭を借景に計画されたということも、もちろん

奇跡のような建物でした

建築ももちろん素晴らしいのですが、それがほとんどオリジナルのままそっくり保たれているということが!
急なエントランス階段を上がって一歩中に入れば、低い天井・ラワンべニアの質素な仕上げ
そして正面の襖を引いてあの吹き抜けのリビングへ
均等なスパン割りの四角い平面の部屋なのに、どうしてこう豊かで幸せな空間が生み出されるのか
魔法にかかったようです
多用されている襖はすべて太鼓張りで、リビング入口の襖は成も高く矩形の色和紙が張られて抽象的な扱い
このリビングの空間のために他のすべてが極限まで切り詰められ、厳しい寸法で納められています
リビングの片隅のダイニングテーブルも簡素な折り畳み式
3角形の主庭も非常に狭いものですが、そこに面する居間三方の大きな開口からは障子越しに軟らかく光が注ぎ、広がった側には根津美術館の庭園が広がって豊かな緑が望めます
何の特別なことがなくとも 質素な素材だけでも 空間の神様が宿る不思議

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最初のこの訪問だけでもう、この東京巡りが素晴らしい満ち足りたものになるとの予感しました

そこから少し移動して、同じくレーモンドの聖オルバン教会へ
事前にお聞きしていたお昼の礼拝の時間に当たってしまったのですが、交差点を挟んで斜め向かいに白井晟一のノアビルがあり、こちらを見学して時間調整
このあたりがさすが東京 至る所に名建築があり、いちいち覗き込んでいたら目的地まではたどり着けません

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聖オルバン教会はイメージしていたものよりもひと回りふた回り大きなものでした
レーモンド特有の丸太の小屋組み シンプルそのもの
なんでこんなにあっさりと出来てしまうのだろう・・・
こちらも内装はやはりべニア張り 腰は煉瓦のフランス積みでしたが、厚み側ではなく面を見せる積み方でした

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レーモンドを堪能して幸福な気分から、厳粛な国家の建築へ

地下鉄の出口を出るとまず目に入ったものは総理官邸 新しいほうではなくあの 2.26事件や 「日本のいちばん長い日」 などの舞台となったあの建物
興味津々ではありますが、さすがに周りは警備の物々しい雰囲気 覗き込みたい気持ちを抑え国会議事堂へ
中学校の修学旅行で多分来たことがあったと思うのですが、はるかに遠い昔のこと
とりあえず手前の衆議院の見学ツアーに参加 
国の威信をかけた建築 というものはスケールも素材も装飾デザインも ともかく凄いものだと 改めて感じ入った次第です
これだけのデザインをこなす というのは大変な修練と素養と時間と・・・あきれ果てるばかり

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衆院の後 参院も見る予定でしたが 次のツアーまで時間が空き まあいいか・・・と予定を変えて、すみだ北斎美術館へ
古いものばかりではなく最新のものもひとつくらいは!

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昼間に建築に頑張りすぎると疲れ果て、夜の観劇に爆睡の恐れあり と早めにホテルに入って一休みして出掛ける予定が やはり予想通り ついつい欲張りすぎて 大急ぎで池袋へ
ともかく荷物を部屋に放り込み ほんの5分10分でも心身を鎮めて と思えども既に心は高ぶり はやる気持ちを抑えて東京芸術劇場へ

わくわく感いっぱいに 野田地図 「足跡姫」
亡くなった勘三郎さんへの想い
歌舞伎/演劇という形のない芸術への想い
それらを野田さん特有の言葉遊びなどを交えてテンポよく進む物語り
役者陣も まあ魅せる魅せる
それにしてもこの夜は信じられないほど良い席で、芝居の中で妻夫木さんと宮沢りえさんがしばし舞台を降りて客席に腰かけて という場面があったのですが 通路沿いに座っていた私のすぐ隣に妻夫木さんりえさんが腰かけて なんだかびっくりしてすぐお隣にあるお顔を眺めづらかった!

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公演チラシ芝居の中で配られたチラシを運良くゲット
実は翌日にも手にしかけたのですが、ふわりと手から離れてしまい 私の眼を見て渡そうとしてくれた女優さんも一瞬 「あっ」 という表情でした まあ欲張らない・・・


二日目

疲れ果てた身体は一晩寝ても回復するようなトシでもないのに朝からまた気持ちばかりが一歩先に目黒へ
この日はあいにくの雨 そして身体を持っていかれそうな風

初日に続きレーモンドで聖アンセルモカトリック目黒教会
こころがうたれる空間です 言葉もない
お稽古をされていたのか ずっとパイプオルガンが奏でられ 雨で薄暗い堂内がますますもって神聖さを帯び 敬虔な気持ちにさせられます
薄暗いとはいえ 側面から斜めに入り込むあの光・・・
コンクリートはコンクリートの建物なりに 素材も構造も実に真正にあらわされ その正直な構成がまことに美しく清い空間を生み出しています
そしてカニングハム邸の襖のデザインもそうでしょうが、この教会でもノエミさんの様々なデザインが彩りを添えています

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いつまででもここにいてパイプオルガンの音色とともに空間に浸っていたい
そう思いつつ後ろ髪引かれる思いで電車で一駅二駅

星薬科大学本館 レーモンドの波状攻撃です
さすがに最初期の建築だけあって ライト/帝国ホテル の装飾満載
しかしホール上部のステンドグラスの絵柄 あれは???
それにしても正面メインのスロープが特徴的なのはともかく、背面側も階段ではなくスロープというこだわり
だけれども屋上へのメンテナンス通路みたいな あそこまでスロープにする?
いやはや・・・
スロープの床仕上げは斜路部分は滑り止めの凹凸市松のブロック 踊り場は大きな切石がモルタルに象嵌状に埋め込まれたもの
壁面や柱などの黒白の堅い意匠とは対照的に自由な趣きで特徴的でした

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お昼をちゃんととる間もなく急いで四ツ谷へ
乗った電車の戸越銀座駅 木を使った斬新なもの!

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初日に続き AMレーモンド PM国家のデザイン という訳で
赤坂離宮迎賓館

いや・・・もうバテました
たまたま13時頃からの予約見学だったのですが、団体ツアーさん あんなにもいっぱい来てるのだ!
もう館内ごった返す状態で それでくらくら来てしまって疲労困憊
休み休み館内ひと巡り でももう心も身体も受けつけられない
途中ベンチで腰を掛けていると知らない間についウトウト
身体を休めて 気を取り直し 二巡目へ
ツアーさんというのがどれも皆同じようなスケジュールなのか、この頃にはうって変わって館内は落ち着きを取り戻し、パラパラと程よい人の流れ
ようやく落ち着いて見学できました
それにしてもまあ豪華絢爛 このような建築を設計する人もいれば施工する人もいたのですねえ・・・
ところで どうしてあんなに大きく立派な扉のドアノブが 小さくてあんなにも低いところについているの???
建築をはかかわりなくもう一言
このごろの日本の公衆便所 本当にきれいに整備されてきているのに 赤坂離宮の見学者用トイレって何?
お粗末を通り過ぎてひど過ぎない?特に男子便所

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赤坂離宮の改修では村野藤吾さんは自身を消したのでしょうね
見学ルート最後の退出時の階段に 「村野さん ここにいらっしゃったの?」 とついつい声を掛けたくなってしまいました
カーテンにもいらっしゃったのでしょうし、表門の警備建物にもいらっしゃったのですが・・・
もう身体が壊れそうなのに欲張って、迎賓館で異次元へ飛んで行った感覚を呼び戻すべく 村野さんに会いに神田へ

森五ビル (近三ビル)
守衛の方にもお断りしてエントランスホールも拝見
守衛の方もいろいろお話しくださったけれど、通りを挟んだ向かいの歩道からしげしげと外観を眺め写真を撮っていれば、ちょうどそこが工事現場でガードマンの人が不思議そうに尋ねてくる
「いろんな人が来てはここから写真を撮っているけれど あのビルがいったい何なの?」 と・・・
でしょうねぇ 口では説明できないのですよ だけれども 実に見惚れてしまうのですよ
近づいて細部をしげしげとみても こうして遠くから全景を見ても・・・
整然と並んだ (だけの?) あの窓の一つ一つ
エントランス周りの何とも言えない納まり
内部の天井のモザイクタイルというよりも そこに吊り下げられている照明器具 

レーモンドの建築を見ても この村野さんの建築を見ても
建築に特別のことなんてなにも要らないのだ
それでも建築が特別のものになりうるのだ
と思わされます
特別なことをせずに特別なものにするのは とてもとてもたいへんなことなのでしょうけれど

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ああ、もう今日も疲れ果てた身体 ずきずき痛む膝と腰にムチ打ちホテルに帰り すぐさま劇場へ

実は折角なのだから と二晩続きでの 「足跡姫」 なのでした
今宵は花道すっぽん脇の席 またまた奇跡的によい席でした
一度観ただけでは掴みかねる筋も 二晩見れば ああなるほど・・・
上手側から見る舞台と下手側から見る芝居
お芝居は生もの 同じものを繰り返し見てもその都度楽しいし発見があります
いつもは自分が観た一回限りの公演にしか想いが及びませんが こうして連夜見てみると
毎晩毎晩ずっと演じられているんだ・・・同じようでいて毎回異なるお芝居が・・・
と今更ながらに思わされます
今回の公演も地方公演がないとはいえ東京のみで2カ月近い興行
役者の方々の体力精神力には驚かされます

ああ 堪能しました

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公演パンフレット



三日目 (最終日)

昨夜ホテルの部屋で飲む酒を控えめにして崩れるように眠ったのが功を奏したか
快適な寝覚め 体も軽い 膝の痛みも気にならない
熱いシャワーで身体を目覚めさせ さて出発
Eテレ0655 でお馴染み 「さらば高円寺」 ではなく 「おはよう高円寺」 です
朝早々でしたが 目指す 座・高円寺 は既に開いていて 人気のない内部をゆっくりと見学
本当はここでもお芝居を観たかったし、この日も演目があったのですが 都合で割愛
建物の特殊な構造構法が外観にも内部にもよくあらわれ 階段にかけての円形窓の離散集合具合がお芝居への胸の高鳴りを醸し出すよう

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気持ちの良い朝をここで過ごし さて 今回の旅のひとつのメイン 林芙美子記念館 へ
途中 ネコさん と遊んで気分も上々

201702tokyo neko林芙美子記念館近くのネコさん
人懐っこい!甘え上手!


林芙美子邸 林芙美子自身が建築の勉強も重ね職人材料も吟味し というだけあって 期待を裏切らぬ素晴らしい住まいでした
そのような施主相手に設計者はさぞかし苦労を重ねたのでしょうが、山口文象さすがの力量
門屋から主玄関へのアプローチも巧みな設え 主玄関は民家風の趣きも醸し出した落ち着いた造り
内部の諸室は数寄屋風
いずれの部屋も落ち天井/小壁などの設えがあり、芙美子が書斎として使っていたという部屋の北側には不思議な高さの開口を通して孤篷庵忘筌の如く 障子が嵌められていたのが印象的
しかしお金のあてなく工事にかかった とのわりにはいったいどれほどの工事費をかけたことか!
ちょっとやそっとの金額ではこの家は建ちません
ヴォランティアの方がすこく懇切丁寧にいろいろとお話しくださって、冷蔵庫や洗濯機などの興味深いお話しも伺ったので、ついついこの工事費は現代の金額にしていかほど? とお尋ねしてみたところ ***円ほど とのお答えに納得
林邸、内部に立ち入っての公開は特別な折のみということで、家屋内には一切上がらず土間から覗き込む形のみでの見学であったのが 少々心残り
この日は前日の4月下旬の陽気から一転肌寒い一日でしたが天気も良く 庭の白梅の花に 春を感じるひとときでした

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さて、頂いた散策マップに従って林芙美子邸から引き続いて佐伯祐三アトリエや中村つねアトリエへ廻ろうか ともいったんは思いましたけれども、また後日に譲り 日暮里へ

朝倉彫塑館 いやはやすごい
いったいナニこれ?
大胆なのか 繊細なのか ともかく常人離れした といいますか 常識離れした
建築の専門家ではできない自由奔放さ?
面白いのですけれど 口悪く言えば ゲテモノ キワモノ
コンクリート造の方がトンデモナイのはまあそれとして
木造数寄屋風の棟の和室紙障子の 組子が長方形断面の竹にはびっくり

ところで 林芙美子邸でもそうでしたがこちらでも 床の間の落とし掛けがはっかけなのはこの頃の流行り?
朝倉彫塑館和室など大胆であったり かなりの間口の床であったり なのに ちゃんと木が入らずに微妙なはっかけというのが、現代の私の眼からはどうも “足りない” 感じがして落ち着かないのですけれど・・・

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さて 古いものから遠ざかり現代建築へ
午前中の林芙美子に続き文豪シリーズ? 今度は 森鴎外

ということで 森鴎外記念館
寡黙な外観
素材といい ディテールといい 大人の建築
朝倉彫塑館の後でこのプロ中のプロの建築か・・・
たまたま近いからというだけの理由でしたが、双方の持ち味が引き立つ?この組み合わせ!
エントランスアプローチの微妙な壁面のずれによる鋭角三角形の軒天井までもが 外壁と同じタイル (というよりは厚みのある煉瓦でしょうか?) で納めてある辺り 唸って見上げてしまいます

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201702tokyo ohgai02


いよいよ旅も終わり もう日も落ちかけた夕刻
けれども貪欲にまだまだ最後のひと踏ん張り
で 目指すは武蔵境
以前からぜひ見たいと思っていた 武蔵野プレイス
22時まで開館している と知って 他の施設が終わってからでも と総仕上げ 大トリ に取っておきました

壁と天井が滑らかに一体的につながる空間
各部分が分節されつつ 水平に垂直に つながる内部空間
内部の空間が正直に反映され 繰り返しでありながら退屈さは微塵もなく どこか現代的な外観
建築も素晴らしかったのですが、22時まで開いているという運営 駅前という立地もあって利用者でいっぱい
何よりも地下二階のティーンズスタジオとされたフロア中央のスタジオラウンジと名付けられたエリア
大人は立ち入り禁止なのだそうで 中ではカップヌードルをすすりながらの子もいたり もう中高生が思い思いに過ごしています
企画運営が素晴らしく それを形にした建築の設計が素晴らしく そして おそらくは誇りに満ちた思いで利用する多くの人々

いい建物をみて この旅を締めくくることが出来ました
どれもこれもが素晴らしかった

201702tokyo musashino01もう暗い
201702tokyo musashino02内部は残念ながら撮影禁止 見学者がいっぱいなのでしょうね


実はこの最終日も夜 別のお芝居を観てから間に合えば新幹線で そうでなければ 夜行バスで帰阪 と思っていたのですけれど、大チョンボでそのチケットを取り損ね (幸いにもそのお芝居は大阪にも来るのでそちらでリベンジ でも本当は東京のシアタートラムという空間で体感したかった!残念・・・)
ですけれど、なんだか贅沢に盛沢山な3日間で こんなにイイ思いをしたら病みつきになりそうです (身体はほんとうに病みそうでしたが・・・)
ああ、コワイコワイ
遊んだ分 また日々精進精進・・・

 * * *

それにしても今回訪れた建築群 劇場も含めほとんどが官の建物
通りがかりのノアビルを除けば純粋な民の建物って近三ビルくらい
東京の文化力 恐れ入りました
もともとが民間頼りの大阪の文化
某地域政党によってさらに根こそぎ刈り取られそうになりました・・・

ガンバレ 大阪!
  1. 2017/02/26(日) 17:40:42
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