建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

2017年を振り返って

今年もまた残すところ数時間となりました。
ますます一年という時間のたつ速さを感じさせられます。

仕事の上では前年からの設計を継続し練り上げることに明け暮れた一年でした。
2016年3月より設計の始まったお住まいは今夏無事着工し、先頃上棟を終えて年末を迎えました。
2016年5月に初めてお目に掛かり同年秋より設計の始まったお住まいは、難産を経て年明け1月には着工に至ることが出来そうな見通しです。
この二つは規模こそ大きく異なりますが、お住まいとはそれらの多寡にかかわらず、住み手にとっても設計者にとってもまさしく真剣勝負であり、とても多くの時間を要する過程です。
来年の年末にはいずれのお住まいでも温かな灯がともり豊かな時間が流れていることを夢見ています。

 * * *

今年は2月に野田地図の「足跡姫」を観たくて東京に行き、その際に久しぶりに東京の建築をあちこち見て廻りました。「林芙美子邸」は今でもくっきりと目に焼き付いています。
夏の終わりに訪れた近江八幡の「ラ・コリーナ」、晴れ渡った暑い日でした。緑に覆われたおとぎの国の建物の、屋根と軒が心に残ります。
辺りの山並みの中の薄ピンクの量塊、作為を消した中庭のみどり、そして光と影・・・「猪名川霊園」は建築に伴う現実的なもろもろを消し去って、純粋なもののありようを示していました。

201702humiko.jpg「林芙美子邸」
201709lacolina.jpg「ラ・コリーナ」
201708inagawa.jpg「猪名川霊園」


週末台風にまともに当たった秋の熱海箱根。
日本的な素材や要素をこまごま散りばめて試してみたかのような不思議な和の「日向別邸」に対し、素材・組み立て・細部に至るまで充実した「起雲閣」の洋 は荒天ものともせず見どころ満載でした。

そして箱根の二つの村野藤吾建築。
「箱根プリンスホテル」は環境の中の佇まいから全体の構成、内外の素材・・・どこを見ても素晴らしい。正面エントランスの低く水平線を強調したラインに対し、芦ノ湖畔側の円形の客室棟はあのバルコニーの竪樋のラインと周辺の木立の垂直線とが響きあい、内部ではあまりにも有名なロビーの奥行の強調された空間の、優美に美しく崇高な天井と驚くほど座面の低いチェア。
二つのダイニングの華麗な空間と それを照らす 人面 や 木馬 の照明。
ドーナツ状上の客室棟は平面計画的にも理にかない、扇形の客室には豊かな窓辺の拡がりが用意されています。一方、周長の短い廊下は絶えず行く手が消されながら続いてホテル特有の単調さも排され、片側には常に閉じたひそやかな中庭を感じられます。
なによりもこのホテルで何度も何度も飽きずに繰り返し見惚れたのは湖岸側に降りる簡素な階段とその手摺。村野建築の階段の美しさは改めて言うまでもなくこのホテルでも様々に見応えある階段がありましたが、そのようなメインの見せ場の階段ではなく、この何でもない附属的な階段の、軽やかでリズミカルな配置と、何よりも単なる丸鋼ひとつだけを用いながらのこの簡素にして美しい手すり。上下二段に設けられた丸鋼の 上のそれはずっと伸びて端部で折り返され 下のそれは 上り口すぐに一段足安めで設けられた踊り場で 何の仕掛けもなくすとんとそんまま床に降ろされ それが実に見事で魅入ってしまう。
このような手すり(に対する姿勢)に一歩でも近づきたい、と願います。
ロビー脇のガラス扉の木製の押し板のビス隠しの、梅文様の埋木を目にしたときは、「ああ、どんな細部にも村野さんが宿っている・・・」と、もう拝むよりほかありませんでした・・・。

「箱根樹木園休憩所」は使われなくなって既に何年を経たのか廃墟となって朽ち果て、屋根は大きく孔があき雑草が生い茂り大変な状態でした。大地から生えてきたような建築 をつくり 地面との接点を大切にした村野さんからしてみれば、そのまま大地に還りつつあるかのような渾然一体としたありようは、言ってみれば本来の姿かもしれません。木製の窓を包み込むような一つ一つの小さなバルコニーも なんとも可愛らしい造形とスケールで、廃墟となってもなお魅せられる建築の姿でした。

201710kiunkaku.jpg「起雲閣」
201710hakone01.jpg「箱根プリンスホテル」
庭への階段
201710hakone03.jpg「箱根プリンスホテル」
ロビー脇の扉押し板
201710hakone02.jpg「箱根樹木園休憩所」

 * * *

今年もありがたいことに、いろいろたくさんの演奏・舞台に接することが出来ました。
年明け早々の チョ・ソンジン の演奏は圧巻でした。明年もまた早々にリサイタルがあり楽しみです。
イザベル・ファウスト アリーナ・イブラギモヴァ 服部百音 のヴァイオリンも心に残ります。
唄モノを避けて通っている私が妙に気を惹かれて出掛けた 中村恵理 の歌唱には震えました。
舞台では
百鬼オペラ 「羅生門」の不思議な時空体験
斬新な演出に時を忘れた 「リチャード三世」
舞台上の特設客席で間近に楽しんだ 「ハムレット」
などなど・・・
大阪公演を欠かさず観る イキウメ 「天の敵」「散歩する侵略者」
初めて触れた マームとジプシー 「あっこのはなし」「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと──────」
いずれも演劇的仕掛けに満ち溢れ魅せられます。
毎公演出掛けた文楽ですが今年は 通し狂言 がなく 見取り ばかりでやや印象が薄いなか、歌舞伎と見比べた「夏祭浪花鑑」は文楽ならではの面白さを味わいました。
一方の歌舞伎 では その七月歌舞伎の 染五郎「夏祭浪花鑑」とともに 仁左衛門「盟三五大切」が歌舞伎の色気に満ちて見惚れました。 五月の花形歌舞伎での 猿之助「金幣猿島郡」 勘九郎「怪談乳房榎」もとても楽しいお芝居でした。

201701seongjin.jpg201702faust.jpg201710alina.jpg201710alina02.jpg  
201706mone.jpg201711mone.jpg201703eri.jpg
201710rashomon.jpg201711richard.jpg201705hamlet.jpg
201706ikiume.jpg201711ikiume.jpg201709mum01.jpg201709mum02.jpg
201707bunraku.jpg 201707kabuki.jpg 201705kabuki.jpg


展覧会では
夏の豊田の「奈良美智展」 後日ずいぶん経って配送されてきたジャケットサイズの図録で二度楽しみました。
秋の京都の「国宝展」 人だかりで観ることもままならない「燕子花図屏風」「伝源頼朝像」なども 閉館近い夕刻にはまばらとなって独り占め状態 眼前の銘品を堪能できました。

201709nara.jpg201711kokuho.jpg


 * * *

まもなく2017年も暮れゆきます
皆さまのもとによい新年が訪れますよう

20171231nichibotsu.jpg
日没時刻の箕面
雨は降ってはいませんでしたが 西の空も雲に覆われ 日の入りは見ることが出来ませんでした
  1. 2017/12/31(日) 18:37:40
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