建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

韮山~熱海~八王子~厚木 建築巡り

前回の3月の 「3つの大学図書館」 の折にはもちろんそればかりではございませんで・・・
その続編を今頃になってつらつらと記します。

朝早くに大阪を出て新幹線を三島で降り韮山へ。目指すは江川邸。江戸初期1600年前後に修築されたといいますから400年以上の民家です。
あいにくの雨模様でしかも結構な降り、駅から歩きましたのが途中はあたかも山道・・・難儀しました。
入場券売り場の方に、「その道はイノシシも出たりして危ないので歩かないでください」 と遅かりしながら注意されたのですけれど、Googleのルート案内を信じて歩いてきたのですよ・・・確かに途中不安を覚えましたが引き返すにも引き返せず・・・。
それにしてもこの江川邸の土間の小屋組み、ともかく細かい!縦横にびっしり!
よほど曲がったことがお嫌いな棟梁であったのか、木材がどれも曲がり材を用いずにビシッと線の通ったものばかり!
凹凸の三和土の土間の上に広がる薄暗がりの中に整然と幾何学的にひろがる小宇宙、言われるような荒々しさなどは私は微塵も感じませんでした。座敷のほうには目もくれず、ただ小屋組みばかりに見とれてまいりました。
向かいに建っていました西蔵の下屋庇はなんと!石の瓦葺。

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もともとは茅葺屋根ですが、銅板で葺き替えられています

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ともかく梁もまっすぐ

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小屋組みの見上げ

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西蔵正面 駒の形をしているので駒蔵ともいうそうです

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伊豆石葺きの庇


せっかくなので立ち寄った反射炉、鋼製のブレースのフレームばかりがやたらと目立ちますが、もちろんこれは後補の補強。このブレースが何と言っても印象深く、もちろんこの反射炉が鉄の鋳造施設であるからでしょうけれど、エントランスや柵、手摺など、そして新たに建てられた展示館も全て鉄の意匠で、一般の観光の方は気にもされないのでしょうけれど、柵とか手摺とかとても良いデザインでした。

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三島の後熱海でくつろぎ、翌日伺いましたMOA美術館、先月に大観荘を訪れた際にも観に行き立て続けの訪問となりました。

この美術館、2017年に杉本博司+榊田倫之 「新素材研究所」 によってリニューアルされたばかりのもの、素晴らしい空間でした。
メインエントランスの漆塗りの巨大な扉、そして展示室への繊細な木製扉。展示ケースの座面床面は畳のもの美しい無垢板のもの四半敷きの瓦のもの、框の納まりや高透過度のガラスと相まって、私などはついついと展示の美術品よりも展示ケースのほうに眼を奪われる始末です。そして何より、その展示ケースの対面の長大な壁や、仁清の 「色絵藤花文茶壺」 を囲う特別な展示空間の、しっとりと黒い漆喰!
壁の小口やアールをとったコーナー、巾木の納まりなど、這いつくばるように屈みこんで眺めいる私はどう見ても不審者、でもこうした建築オタク(?)もいっぱい訪れて美術館側は慣れっこでしょうね。
もちろん3月の訪問は 光琳の 「紅白梅図屏風」 がお目当て、そちらもしっかりとまぶたに刻んでまいりました。

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正面扉の内観 玄と紅の漆

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現代的な洗練さを感じさせる展示エリアへの入り口 正面に伊豆の海が広がります

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展示室へのアプローチ 床は凸状の敷き瓦 正面の扉の細いスリットにはアクリル板が埋め込まれています

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展示室の様子 右側が黒漆喰の壁 この壁により落ち着きがもたらされると共に対面の展示が映り込みません

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仁清の壺のためだけの特別な展示室の囲い

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お目当て 「紅白梅図屏風」

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当時の黄金の茶室は建物の奥まったところで暗がりの中にあったとのこと、露出を抑えて撮ると当時の雰囲気がつかめますとの案内の方の助言です
暗がりの中の黄金は華美なものではなくとても艶めかしいものです 成金趣味ではなかった!


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ミュージアムショップのカウンターがとても美しい素材と納まり 商品陳列台も素晴らしいものでした


多摩美とムサ美を訪れるためにこの後泊まりましたのが、八王子の大学セミナーハウス。関西の大学に通った私にはなじみのない施設でしたが、今回やっと念願かなって訪れることとなりました。
バス通りから少し入るとすぐに前方にあの逆四角錘が姿を現してびっくり。もっと山の中森の中にあるのかと思っていました。暗くなりかけた頃に到着して翌日朝にはもう出立、慌ただしいことこの上なしでしたが、暗い中あるいは早朝日の出を待って広い敷地内を歩き回り、他所の学生さん方が使用中のセミナールームを覗きこみ(無遠慮に入り込んで失礼しました!)、タオルぶら下げ共同の浴室にも出掛け、深夜にはポツンとラウンジにたたずみ・・・もうすっかり満喫、宿泊者の特権!をフル活用でした。
ともかく既製品とか工業製品とかとは対極の造り方、ひたすら手と汗の痕跡を感じさせる建築群、それ以前に地形を読み込むのって一体どうしたんだろう?と思わされます。やはり初期の建築群が見応えあります。それにしても、もうかなり暗い中松下館をうろついて、その屋根を歩きかけて“ちょっと足元怪しい・・・”と躊躇、翌朝再度訪れて見てびっくり、いやはやとても歩けるような代物ではない。しかも濡れて滑るし・・・。その昔、荒川修作さんの養老天命反転地の危険さが話題となりましたが、その先駆者がここにあり、です。ユニットハウス群はすでに廃墟の様相、その一つの扉の前で 守り神のように頑とたたずむ堂々のねこさん、どうかいつまでもセミナーハウスを守ってね!とお願いしてまいりました。

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本館の夕景 ここの個室に泊まりました

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本館3階のラウンジ

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本館4階には粘土模型が置いてありました 全貌がよく分かります

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松下館 手摺がリズミカルでいいです 1階と2階が非常に近い

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松下館の屋上 ここを歩けって???とてもムリーーー

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共同浴室壁面のモザイクタイル

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こちらは泊まった部屋のシャワールームの壁面タイル 共用トイレなどにも凝ったタイルの貼り方が施されていました

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ユニットハウスの扉正面にでんと居座るねこさん 貫禄十分
横には人相書?に注意書き 曰く 「爪が出ることがあるので むやみに手を出さないように!」



二つの大学図書館を見終えた後、厚木へ。
神奈川工科大学KAIT工房とアミューあつぎの屋内広場 sola、ふたつの石上純也作品の見学。
さすがに初めて雑誌等で見た頃のKAIT工房の衝撃は薄れましたが、やはり現実の空間体験となるととても面白い。様々な向きとサイズの鋼材が散りばめられて織りなす場所場所の独特の感覚は興味深いものでした。その一方で、いわゆる柱らしい柱がないことについては、実空間ではほとんど意識にのぼりませんでした。空間のスケールのなせる業でしょうか。
KAIT工房のすぐ横では多目的広場の工事中、とはいえもっと進んでいるのかと思いきやまだ掘削の段階でした。どんな空間が出現するのか、こちらも楽しみです。

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外観と樹々の映り込み

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密な柱のエリア

  * * *

この後東京池袋に出てシメは観劇
前野健太さんももちろんながら松たか子さんの歌声に聴き惚れ、その余韻に浸って夜行バスで帰阪した、充実の旅でした。

201903sekaiwahitori.jpg
岩井秀人作・演出「世界は一人」 松尾スズキ 松たか子 瑛太 / 東京芸術劇場 プレイハウス
  1. 2019/04/18(木) 15:54:18
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