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木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

国立京都国際会館見学記

先日 京都宝ヶ池に国立京都国際会館の見学に行ってきました。

学生時代に京都に4年も住んでいて、けれども宝ヶ池はずいぶん遠く、その後大阪にもう40年近くもいて、その間には地下鉄も開通して国際会館まではすっかり行きやすくなり、京都工繊大がある松ヶ崎までは何度となく行っているのに、もう一駅足を延ばしたことがなくウン十年・・・
ひどいズボラがお恥ずかしい限りでしたが、宝ヶ池プリンスホテルとセットでようやく到達。


村野藤吾氏最晩年の宝ヶ池プリンスホテルは箱根プリンスを見た後だけに焼き直しの感がぬぐえず、かといって箱根のあの劇的なロビーに値する空間もなく、ホテル自体も宝ヶ池に面するわけでもなく、少々期待が空回り。けれどもフロント背面の大胆な紙障子やロビー床のカーペットの模様は京都を感じさせる美しい意匠でしたし、階段や吹抜周りの手摺りの妙技は相変わらず素晴らしい。
見学に際してロビーに一言お断りを入れればとても丁寧で親切な対応を下さり、こちらもさすがです。


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外観全景
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フロント背面の紙障子 自由闊達なデザイン
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和食レストランの入り口は凝った村野さんらしい意匠
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階段は手摺・支柱など村野さんの真骨頂 脇に置かれた家具も味があります

  * * *

宝ヶ池の周りを散策して一服、池越しの国際会館は右に比叡山の姿も重なり、とても美しいものでした。

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さて、国際会館へ。

見学に先立って最近出た本 「特薦いいビル 国立京都国際会館」 で事前に予習、と言いますよりもこの本を見て、「そうだ 行ってみよう!」 となったというのが事の次第です。

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BMC・著 西岡潔・写真 大福書林・刊


昔々、勤めていました設計事務所の書庫にありました 「国立国際会館 設計競技 応募作品集」 を見て、菊竹清訓さんの応募案に圧倒されて以来、菊竹案の国際会議場こそを見てみたい!と思ってしまったのが今日まで足を運んでいなかった一つの理由です、いえ言い訳にすぎませんが・・・。
もう一つ、私が学生の頃の建築案内書に、国際会館の造形を 「合掌造りを模した」 云々とあり、この国際会館に先立つ国立劇場が校倉造りを模したということもあって、若かった私は京都という地で建築を学んでいたということもあってなおさら意識的に、現代建築が過去の造形様式を模することに対しての違和感 (あるいは嫌悪感) を覚えており、それが足を遠のけていたというのは事実です。

けれども設計者の大谷幸夫氏はあくまで空間の断面形状から合理的に台形を選択してそれを造形にも高め、合掌造りなどとの発想とはまったく別の次元で正統的に新しい建築に取り組んでいらっしゃったというのが真実でした。
いったい誰がそのように解説したのか、つまらぬ風評に影響され、自らの眼で現実の建築を確認することも設計者自身の言説を正しく理解することも怠った挙句、身近にある名建築を見逃すこと40年・・・実におバカなことでした。

今振り返って大谷・菊竹二つの応募案を見比べてみても、双方ともに図面から気概が立ちのぼってきます。思想も造形も機能技術も優れて際立ったもので圧倒されます。そして冷静な目で見てみれば、大谷案はやはり建つべくして建ったと思われます。

そして現実に建つ大谷幸夫設計の国際会館は素晴らしく見応えのある建築でした。

台形をさまざまに組み合わせたその外観は大胆でのびやかに、景観ともよく調和し、その素材のコンクリートも多種多様の工法と仕上げ方で変化に富んでいます。その台形が生み出す主要空間の断面形状は国際会議場にふさわしい品格と荘厳さに満ち、台形と台形の隙間に生み出される変化に富んだ空間は、屋外テラスや通路脇のラウンジなどに活かされ、何といってもエントランスからメインロビーへ至る印象的なアプローチ空間を演出しています。さすがにRoom C-1・C-2の傾斜壁面に建て込まれた襖・紙障子には驚かされましたけれど・・・。
そしてこの国際会館のメインは何といっても様々なスキップフロアで構成された立体的なメインロビー。「重要なことは議場ではなくロビーで話され決められる」 という思想に基づいているそうなのですが、メインロビーには驚くほど豊かな面積が割り当てられています。それ以外にも各会議場前ロビーはもちろん通路や階段脇であったり至るところにミーティングのスペースが設けられていますのが印象的。そしてそれらの空間を支える素材・納まり・手仕事の技!大胆な空間構成と細部の意匠・素材との調和に設計者・施工者の圧倒的なエネルギーを感じさせられずにはいられません。
それにしてもこの内外のコンクリートの膨大な面積を職人がコツコツと斫りに斫ったその仕事!
階段などの立ち上がりと床面との取り合いはなだらかにアールが取られ、その精度の美しさには見惚れます。この建築の斫り仕事は一旦躯体のコンクリートを打ち上げた後、意匠として骨材を選別して混入した表層のコンクリートを二度打ちしてから斫ったものだそうです。その昔勤めていました頃、二度三度ほどコンクリートや石の斫りを試みたことがありました。面積的にはごくわずか(なにしろ高価!な仕事ですので・・・)でしたが、職人の手間はそれは大変で、そしてもちろん効果は絶大。その後はコストはもちろんですが、そのような大変な仕事をこなす斫り職人がいなくなったということもあって、私の意識の中からはすっかり忘れ去られた仕上げでした。
加えて家具とアート!建築の設計と一体的に進められた剣持勇氏デザインの家具や、工事費の2%を目標に (実際には1%となったそうですが) そこかしこに配された芸術作品の数々。単に後から芸術作品を飾りました、というのではなく建築と芸術作品とが対等に組み込まれるという理想の形です。
建築の台形のモチーフに対して、照明は折り紙状の菱形がモチーフとなって実にバリエーション豊かに展開して空間を彩っています。
苔をイメージしたという緑色のカーペットには石庭の砂紋を映したさざ波が立体的に拡がり、場所によっては床から腰壁へともつながっています。
内部の空間だけではなく、台形形状で生み出された屋外テラスや、宝ヶ池ともつながる池とその水面を渡る格子状の歩廊など屋外空間も魅力に満ちています。

バリヤフリーが前提となる現代の公共施設ではご法度となった感のあるスキップフロアが多用された床の構成を含め、ごつごつとした骨太の造形、手の痕跡豊かな職人技に満ち満ちた仕上げの数々、建築と家具・工芸・芸術との幸せな結合など、現代の薄く軽く滑らかで光沢感に溢れ、コンピューターの三次曲面も多用される建築とは隔世の感があります。
まさしく昭和の佳き手仕事の時代の建築ですね・・・
建築の実体のみならず、公開設計競技の過程やその熱気を含め、設計建設そして維持管理のすべてが 「佳き時代」 を感じさせる建築です。それらを懐古的に伝えていくのではなく もちろん 人里離れた佳き時代の遺物 とならず 今後もさらに時代に適応しつつ存在感を高めていって欲しいものです。
 
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アプローチからの威容
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庭園側の外観 池に面して張り出すのは貴賓室などの控室
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V字型の柱は鉄骨で耐震補強されていました
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近未来的な趣きのアプローチ空間
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立体的なメインロビー 剣持勇のチェアはさまざまな置き方で座る人の関係にバリエーションをつくります
こんなことを書くと今の時代には叱られますが、やはり後に加えられた多くのスロープがスキップフロアの
大胆で広がりある空間を少々窮屈なものとしてしまっていると感じざるを得ませんでした
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この柱の重なりには思わずカメラを向けたくなりますよね
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壮大なメインホール
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会議場A 私はこちらの意匠の方が好きです
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台形によって生み出されるラウンジコーナー 落ち着きあるいい空間と家具です
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ルームCの斜めの襖・紙障子 開け閉めにはちょっと気を遣いそうです
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建物上階からみる庭園と それにつながる宝ヶ池

  * * *

takaragaike shika 
宝ヶ池周りにも 国際会館敷地内にも 何頭も鹿がいました
  1. 2019/06/23(日) 11:33:29
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