建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

多治見市モザイクタイルミュージアム訪問記

正月愛知に帰省した折に、名古屋市美術館で開催中の「開館30周年記念 アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展に出掛けてきました。

ヴィトラ・デザイン・ミュージアムとアルヴァ・アアルト美術館によって企画され世界を巡回する回顧展ということで、結構期待して出掛けたのですが、うーーーん・・・。
どうもいまひとつ展覧会のピントと私の興味が合わなかったみたい、家具や照明器具はたくさん並べられてはいましたがそれ以上には感じられず、建築については断片的な提示と恣意的な写真でなんとも全体像が見えにくい印象でした。ニューヨーク万国博覧会フィンランド館のCGはかなり力の入った素晴らしいもので空間の追体験が出来ましたけれど・・・。

20190115aalto.jpg

美術館を後にしてちょっと足を延ばして岐阜県多治見へ、藤森照信さん設計の多治見市モザイクタイルミュージアムが目的地です。

大人も子供も思わずカメラを向けたくなる何とも不思議で愛らしい建物です。いかにも「土っ!」という外観は、土のお山 という塊ではなく、それをスパッと平面で切り取った形状ですが、形自体はもこっもこっとした愛嬌ある形状であり、その平面に穿たれた窓は正方形で規則正しく配置されています。そして壁面全面に埋め込まれた陶器のかけらは一つ一つが不定形で様々ながら、配列は斜め45度の正方形グリッドに則っています。そのかけらが陽を浴びて土の面の中でキラリと輝いています。
かと思えばその全体を縁取るのが屋根に植えられた低木で、なにやらもじゃもじゃと毛が生えたよう・・・、けっして ふさふさ とではなく、カビが生えた程度というのがとてもご愛敬で・・・でもこの木は今後育つのかな?
ともかく不定形の有機と幾何学とが不思議なバランスで共存して、それがこの建物の魅力でしょうか?

そして内部、2階3階の展示室は無難な現代建築の一室、トイレやエレベーターなども近江八幡のラ・コリーナのようには手を加えず、工業製品がそのまま使われています。一方4階は屋根の形状そのままの不思議な空間で全面が白いモザイクタイルで覆われ、その天井には豊島美術館のようにぽっかり穴が開いています。その孔に渡されたワイヤーにはタイルの破片がびっしりと貼り付けられビーズ状、手仕事の極みです。展示品がタイル製品ということで、この4階展示室は(半)外部空間なのでした。
それにしてもごく当たり前に目にしていた、モザイクタイル貼の手洗いや浴槽、銭湯などのタイル絵やタバコ屋さんの店先のカウンターなども、美術館の展示品となるご時世となりました。まもなく平成の世も終わろうとしているこの時代、昭和は遠くなりにけり・・・なのでしょうね。

ちょうど特別展「まちかどの近代建築写真展~タイルに出会う旅~」も開催中で、様々なタイルに彩られた無名の近代建築の写真の数々にいっそう昭和を感じたこの建物探訪でした。

20190105tajimi001.jpg
冬枯れで芝が外壁と同色化!時節柄エントランスには門松 竣工時の写真と比べますと確かに屋根の木は育っています

20190105tajimi002.jpg
西陽に輝く陶器の破片の数々

20190105tajimi003.jpg
埋め込まれているのはタイルやら茶碗やらのかけらです

20190105tajimi004.jpg
4階展示室 写真では西陽の影響でかなり赤みがさしていますが 実際の空間は白いです

20190105tajimi006.jpg
開口とすり鉢状のワイヤー部

20190105tajimi007.jpg
ワイヤー部の詳細

20190105tajimi008.jpg
3階展示室 数々のタイルの名品には見とれました

20190105tajimi009.jpg
夕景

それにしてもこの辺りはやはり車社会、電車とバスを乗り継いでは少々行きにくい。名古屋地下鉄の改札でちょっとトラブって到着が僅かに遅れ、多治見では次のバスが1時間半後!
17時の閉館後も、30分以上待って美術館前のバスで帰路についたのは私一人でありました・・・。
  1. 2019/01/12(土) 18:06:47

2019年が明けました

新年あけましておめでとうございます


20190101sunrise.jpg

2019年 大阪箕面は風もなく晴れ渡り 美しい日の出で明けました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


2019nenga001.jpg

2019nenga002.jpg

2019nenga003.jpg

本年の年賀状です
  1. 2019/01/01(火) 11:33:48

2018年を振り返って

2018年 平成30年もまもなく暮れゆこうとしています。

今年を振り返れば何といっても
6月18日に襲った大阪府北部地震 と 9月4日の台風21号 です。
6月18日 ちょうど家を出た辺りで、当初何が起こっているのかよくわかりませんでした。地震対策を怠って書架がわりに木箱を天井まで積み上げた事務所には、一歩足を踏み入れた瞬間その惨状に絶句!鉢植えの水と土に多くの書籍が浸かってひどい状態でした・・・。
そして9月4日の台風、これまでに経験したことのない激しい風雨に事務所のビルは大きく揺れ、先の地震で傾いたスチール書架はギシギシ音を立てて前後に大きく揺れまくり、気持ちのいいものではありませんでした。
その他 酷暑の夏や西日本を襲った水害など、自然の脅威にさらされたこの一年でした。
府内でも補修の工事がまだまだ行き渡らず、ビニールシートのまま年の瀬を迎えられている家屋も多く残ります。
被災された方々には改めてお見舞い申し上げますとともに、来たる年が平穏な一年であることを切に願います。

20180618jishin.jpg


私にとってはこの夏に二棟の住まいの竣工を迎えることが出来ました。いずれの住まいも2年以上を費やしたものでした。設計とすれば工事中も含め随分時間と手間とを要したものですが、これらの住まいがこれから刻んでいく年月からすればほんの僅かな時間です。
夏に訪れました糸魚川の谷村美術館、伊豆の江之浦測候所、琵琶湖畔の佐川美術館樂吉左衞門館などはいずれの建築にもとても私の思いも及ばぬほどに構想から実現に至るまでの果てしない道程がうかがわれました。その時間とエネルギーが如実に建築に現れています。
改めて建築の奥深さと素晴らしさを、果てしない道のりを知らされる思いでした。

keihanna01.jpgけいはんなの住まい
 minoh-o 01箕面 五人と二匹の住まい

201808tanimuramuseum (5-2) 谷村美術館
201807enoura (4-2)江之浦測候所
201809sagawamuseum (5-2)
佐川美術館
樂吉左衞門館


ありがたいことに今年も実に多くの舞台に接することが出来ました。
その中でも2月の「アンチゴーヌ」は深く深く印象に残ります。今年はもうこれに尽きます。生身の役者の圧倒的な力に我を忘れました。
つい先日12月27日の「スカイライト」、再び蒼井優さんの舞台で私は今年を締めることができました。
素晴らしい時間・空気感をありがとうございました。
その他にも本当にたくさんの舞台を見ることが出来ました。
印象深いのは
現代能楽集「竹取」 これは先にも記事で書いた通りです。
ふたり芝居「悪人」「家族熱」 そぎ落とし極限まで純化した舞台、要素を絞り込んだ構成が素晴らしく、単純化された美術もお見事!
構成と言う意味では「豊饒の海」にもとても惹かれました。四部からなるあの小説をどのように一本のお芝居にまとめ上げるのか、興味津々でしたが、異なる時間と場所を自在に行き来するお芝居ならでは・・・。能舞台にも通じるような簡明で象徴的なセットも印象的でした。
野田地図「贋作 桜の森の満開の下」、前川知大「ゲゲゲの先生へ」「図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの」、松尾スズキ「ニンゲン御破算」、ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」「て」、長塚圭史「かがみのかなたはたなかのなかに」「MAKOTO」などなど・・・ まだまだつぎつぎ思い出されます。

昨年の「夏祭浪花鑑」に続いて今年は「女殺油地獄」で歌舞伎と文楽との双方を見比べることができましたのも、うれしいことでした。
実際に油(に見せた液体)にまみれて滑る、刺す、生身の人間の業が迫る歌舞伎と、現実をはるかに超えて演劇的想像力に激しく訴えかける人形浄瑠璃。
こうして同じ演目を見比べることができるというのもとても贅沢でシアワセなことです。
さて来年は・・・?期待してしまいます。

antigone.jpgtaketori 2018akunin.jpgkazokunetsu.jpghoujonoumi.jpg
nisesaku sakura 2018-02 gegege2018.jpg201807gohasan.jpg201807kabuki.jpg201811bunraku-2.jpg


コンサートでは大西順子さんにとどめを刺す?
5月の高槻ジャスストリートの、野外とホールそれぞれのカルテット演奏が素晴らしく、そして、この年末12月12日には大阪フェニックスホールでのトリオ演奏もまた、心躍る演奏でした。昔々デビューした頃の一連のアルバムにも惚れ込んではいたのですけれど、その一方ではやや強引さなども感じてしまっていました。途中のブランクがあって、迷いなどもあって・・・・。ですけれどもやっぱり凄い、もの凄い。いわゆる小奇麗な とか、スウィングしてますーっ とかいう演奏とは次元の異なる “魂” を感じてしまいます。
NHKテレビで見た「SWITCHインタビュー 達人達 蝶野正洋×大西順子」もよかった!プロレス技なんかも出ちゃったりして・・・

そして マリア・ジョアン・ピレシュ です。
引退公演の日本ツアー 大阪は4月14日のザ・シンフォニーホールでした。オール・ベートーヴェンのピアノソナタ3曲 第二部第32番の、あのスウィング するかのようなフレーズの ピレシュの歓喜の表情が忘れられません。でも、いくら耳に刻もうとも音は消え去っていってしまいます・・・。もう生の演奏には二度と触れることができないのでしょうか?
9月のアリス=紗良・オットのリサイタルも心に残ります。「ナイトフォール」というコンセプトを演奏に先立って説明を加えて始まったコンサート、LEDの照明効果も際立つ一夜でした。
同じ一週間のうちにゲルバーとアファナシエフ、両巨匠のベートーヴェンプログラムを聴くことができたのも今年10月、そしてまだつい先日のヒラリー・ハーンは格の違いを感じさせる素晴らしい演奏でした。
何の予備知識もなくたまたま出掛けた11月の 「The Glamorous Duo Recital 池村佳子Cello 土屋友成 Piano」 は、予期せぬと言うととても失礼なのですがたいそう素晴らしく、先日クリスマスに宝塚の自立支援施設で催されたサロンコンサートにもお邪魔して再度聴き入ってまいりました。
junkoonishi 2018CD01
junko onishi very special-s
junko onishi xii-s

201804pires-s.jpg201809otto-s.jpg201810gelber-s.jpg201810afanassiev-s.jpg201812harn.jpg


観に行きましたお芝居の戯曲・原作は割と読むようにしています。
「アンチゴーヌ」について読み比べましたのは以前に書いた通り
野田秀樹「贋作 桜の森の満開の下」の脚本と坂口安吾の元ネタ小説の何篇か
「お蘭、登場」に対して江戸川乱歩の元ネタ短編の数々
井上ひさしさんの「ムサシ」「シャンハイムーン」「夢の裂け目」
マームとジプシーの「みえるわ」に対して 川上未映子さんの「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」「水瓶」
向田邦子「家族熱」、サルトル「出口なし」、三島由紀夫「豊饒の海」からはまだ第一部「春の海」のみ・・・
「1984」のオーウェル原作は途中であえなく撃沈・・・。お芝居もしんどかったのですけれど、本はとても無理・・・、でもなんとか「まんがで読破 1984年」だけは読みました。
それらを離れては

星野智幸「焔」
松浦寿輝「名誉と恍惚」
東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」
などが印象に残っています。
恩田睦さん「蜜蜂と遠雷」は本を読んだ後に、作中曲を全て、登場人物毎に演奏順に収録した8枚組CD「蜜蜂と遠雷 ピアノ全集」まで楽しんでしまいました。
三浦しをんさん「ののはな通信」は最初のうちは どうしょう・・・?とこのまま読み進めることが気恥ずかしいような感覚でしたが、途中からは引き込まれました。
宮本輝さんの「流転の海」は無事完結を迎えられて良かった。多くの人が完結に接することができて安堵したことでしょう。もう初期の頃の部は記憶もあいまいですので、改めて最初から読み返してみたい。

hoshino_honoo.jpgmeiyo to koukotsubokugakoroshita.jpg
mitsubachi.jpgnonohana tsushinnonoharu.jpg


こうして振り返ってみますと、今年もお陰さまで好き放題の一年でした。ありがたいことです。
年が明ければ2019年、1959年生まれのわたしは干支がひと巡りとなります。
今年一年を振り返って ではなく これまでの60年を振り返って という時なのでしょう・・・。

まもなく2018年も暮れゆきます。
本年もありがとうございました。

20181231sunset01.jpg
箕面の今年最後の日の入りは、丁度その時刻に西の空を覆う厚い雲に眼にすることはかないませんでした。
ようやく雲が流れた頃の、既にたっぷりと陽が落ちた箕面の年の暮れです。

  1. 2018/12/31(月) 19:47:58

- なにがどうなろうと、たいしたことはありゃせん - 宮本輝 「野の春」 流転の海 第九部

静かに そして 深く 読み終わりました

全九部 37年間にわたる執筆
あとがきにあります
「ひとりひとりの無名の人間のなかの壮大な生老病死の劇」
物語が結末へと進む中、かつての登場人物がさまざまに現れてあたかも精算するかのようです
赤の他人の沼津のお婆さんを献身的に介護した博美も 大会社の社長となって身を成した辻堂も それぞれにやはり情けない姿で物語から退場し その辻堂に相対した熊吾自身の態度も褒められたものではなく 本当に人間は様々であり 同じ人物でもまた時と場合によりふるまいにおいても感情でも様々であるなあ と感じさせられます

熊吾の最期 倒れた後の病院でひどい扱いをされ厄介払いされた先の 松坂一家にとっては見知らぬ遠方の土地である大阪狭山の精神病院
けれどもそこでの院長と4人の患者のこころとふるまいに救われた想いがします
そして桜の花びらが散り続ける雨の合間の春の野道を葬儀の参列に歩み進んでくる14人の隊列
熊吾と深く繋がったそれらの14人にわたし自身が熊吾にのり移つられたかのように過去の作中での一人一人に想いを馳せて別れを告げます
作者曰く
「新たな旅へと向かう人々がどこかの原野を楽しげに出発する光景」
人の死であり別れでありながら晴れやかに 物語の幕開けであるかのように閉じてゆきました

主に大阪が舞台の物語とあって作中の地名や店名にイメージを湧き起こしながら読み進めるのですが 大阪在住とはいえ愛知出身の私には残念ながら戦前戦後の大阪の街が描けません 現役の大阪市電にも乗ったことがなく 阪神駅裏は再開発後の駅前ビル群の姿しか知らず 昭和の大阪の風景写真などをWEB上で見ながら今の現実と重ね合わせ そのような日本の都市の移り変わりと併せて 松坂熊吾という人物を通して昭和という時代の流れ 日本の世相や風物や人間の機微などの変遷を感慨深く読みました

物語を紡ぐというたった一人だけの作業を
ひとつの物語に注ぐこと37年
その歳月に圧倒されます
壮大 の名に相応しい大作でありますけれど
決してヒーローが華々しく登場し ファンファーレが鳴り響くような 大上段に構えた劇的な壮大さ
ではなく
無名の市井の人々の 具体的で生身の日常から連綿と紡ぎあげられた壮大さ
とでもいうのでしょうか・・・

野の春
  1. 2018/12/08(土) 14:57:23

キャットウォーク

昨今の猫ブーム、建築界にも押し寄せて猫のための家づくり指南本が大人気。
もちろん私も早々に買い求め、建築の工夫を学ぶよりもそこに写ったネコさんの写真をでれーと眺めてにやける始末・・・
そんな折に願い?が通じましたのか、猫のいる住まいのお話しが!

そのお住まいが今夏完成しました。
2階リビングとして、屋根の勾配を室内天井に表した住まいです。その屋根を支える木材も現しとしていますが、水平に架け渡された構造木材(梁)、強度上は一本で足りるのですがそこをわざわざ二本抱き合わせにしています。
なぜだかお分かりになりますか?

catwalk001.jpg

屋根の棟木を支える束(短い柱のような木材)が中央に立っています。
高いところが好きなネコさんには梁の上を歩いてほしい!ですが折角歩いてくれても束で行き止まりとなってしまってはネコさんに申し訳ない・・・
ということで、ちゃんと歩けるように束を挟んで梁を二本とした次第、このお宅には二匹のネコさんがいますが、お互いに「道を譲れ!」との諍いもなく行き違いもできます。

catwalk002.jpg

ネコさんのことを考えての設計ですが、ニンゲンさまにはそうは申さず、「梁を二本にしてその間に照明を仕込みます」ともっともらしい設計理由、二本の梁の隙間に間接照明のアッパーライトと直接光源のライティングダクトを仕込んでいます。
でもバレバレでしたかね?

catwalk003.jpg

他にもネコさんのことを考えてあの手この手の工夫を散りばめたこの住まい、その成果を想像しながらの設計とはこんなにも楽しいものでしたか!建築主さんのお宅に打合せに伺うのも、足元にすり寄ってきてくれたり図面の上を歩いてくれたり・・・が楽しみで、毎日でも打合せに伺いたい気分でした。

さて
果たしてネコさん達は私の仕掛けにちゃんと気付いて悦んでくれているでしょうか?(ねこだからなぁ・・・ いや所詮はニンゲンの浅知恵だからなぁ・・・)
  1. 2018/11/14(水) 09:55:25
前のページ 次のページ