建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog

木村哲矢建築計画事務所 木村哲矢 が  見たこと 聴いたこと 感じたこと

川上未映子×マームとジプシー 「みえるわ」 @味園ユニバース

連夜のお出掛けで恥ずかしいですが
昨晩の

川上未映子×マームとジプシー 「みえるわ」

いやはや 凄かった

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圧倒的な 言葉!言葉!言葉!

怒涛の如く降りそそぐ 詩の研ぎ澄まされた言葉の群れ

しかも
それらのすべてが たった一人の役者さんの口から語り尽される
詩と詩の合間もその役者さんは袖にもひかず
舞台上で意匠を着替え メイクを整え のどを潤し

舞台の上には
恐竜の骨のような流木
足踏みミシン
マネキン
木箱に入った眼科の眼鏡処方用のレンズ群

そして小屋は大阪 味園ユニバース
赤い壁の階段を下りて地下に潜る
昭和の夢の詰まった 異空間
ネオン管?の不思議なステージ背景
天井に浮かぶ 惑星のような色とりどりの球体
1970大阪万博を思い起こさせる仕掛けの数々
一歩外に出れば 猥雑な なんばの裏街

そこに
とめどもなく降りそそぐ大阪弁の詩句
突き刺さる先鋭的な音楽

この空間に
このパフォーマンス

まいりました

全国各地の公演もそれぞれに刺激に満ちてはいるのでしょうけれど
でもやはり この大阪公演でよかった

むかしむかし大学生~20代のころに足を踏み入れていたアングラ小屋を彷彿させる時間と空間
濃い とても 濃い 70分

前夜の公演では 終演後に川上未映子さんと藤田貴大さんによるアフタートークがあったのですが
三浦文彰さんのリサイタルがあってこの夜に・・・ 重なるものです 残念ながら
アフタートーク 聞きたかったです

  * * *

舞台の前後に
この 味園ビル を探検(?)
滝の周りを巡るスロープで2階に至れば
ビルの中には昭和のにおいぷんぷんの
アヤシイお店がぎっしり詰まった裏路地の風情

毎年秋に開催される「生きた建築ミュージアム」でも
この味園ユニバースのガイドツアーが催されていましたが
これまで参加が叶わず

昔から前はよく歩いてはいましたけれど
その怪しげな雰囲気になかなか足を踏み入れられず
ようやく昨晩が初体験

不可思議にして面白い異次元ビルでした

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味園ビル
1955
設計 志井銀次郎
(「生きた建築ミュージアム」公式ガイドブックより)

川上未映子×マームとジプシー 公式サイト http://mum-gypsy.com/news/4108
味園ユニバース 公式サイト http://universe.osaka/
  1. 2018/03/02(金) 12:53:28

弥生三月 三浦文彰

早いもので今日から弥生三月
あんなに寒かった日々もひと段落
今日は幾分和らいで春らしい朝です
そして春らしく風も強い・・・

朝事務所までの道すがら
早くも枝垂れの梅が咲きほこるさまを眼にし
歩道脇の植え込みには鮮やかな黄色の花
箕面川の川面にはつがいの鴨

僅かに一日の違い 如月 が 弥生 に変わったとたんに
なんだか急に世界が変わったような心地がいたします

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川面のゴミ(ビニル袋)が悲しい・・・

  * * *

ゆうべ 大阪いずみホールでの 三浦文彰さんのリサイタル
聴き惚れてきました
三浦さんはくつろいだ雰囲気で登場し 美しい音色を響かせます
ピアノのイタマール・ゴランさんももちろん単なる伴奏ではなく
まさしくヴァイオリンとピアノとの一対一の応酬で
けれども互いにも寄り添い
曲目も聴きごたえのあるプログラムでとてもよい夜でした

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このお二人を初めて聴いた苦い記憶
2011年7月6日のザ・シンフォニーホールでのリサイタル
前日夜遅くまで京都でお酒を飲んでいて睡眠不足
加えて席がたまたまなんとまあ最前列中央
朦朧とした心地で三浦さんの脚ばかりを眺めていて
ピシッと折り目の付いたスラックスだな・・・
ピカピカに磨かれた靴だな・・・
そんなことばかりが頭の中を巡っていた
情けない・・・

昨晩のいずみホールではちゃんとわきまえてステージからは距離を置いて中央横通路に面した席を確保
その頃からの成長のあかし?
観るにも聴くにも最善の席で堪能してまいりました

三浦さんはつい先日の兵庫県立芸術文化センターでの
「下野竜也×三浦文彰 ザ・スコットランド」 も楽しんだばかり
この時のプログラムもスコットランドゆかりの演目でとても良かった
そしてこの二人とあってアンコールが
「真田丸」メインテーマ
加えて 三浦さんも第一ヴァイオリンの席に加わってのもう一曲
「西郷どん」メインテーマ
充実した演奏会でした

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終演後はサイン会と撮影会
下野さんのはじける笑顔!
  1. 2018/03/01(木) 10:25:15

知多半島半田 町巡り

先の記事の 名古屋丸栄百貨店 を訪れた翌日 知多半島の半田を巡りました
同じ愛知県尾張地方でも 一宮市で育ちました私には半田は縁遠いところ 子供の頃には知多半島へ海水浴に連れて行ってもらいはしましたが 半田には行ったことがなく 今回が初めてでした
運河と蔵 そして 古い民家の町並み
魅力的な街の風情にびっくり 知らなかった!

名鉄知多半田駅で降り立って東へ
JR半田駅を越しますとそこには現存最古の跨線橋 そして駅前には最後に豊武線を走ったというSLの保存展示

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明治43年に設置された全国で最も古い跨線橋

そこを抜けると蔵と運河の風情ある町並みに その運河に面して 「ミツカンミュージアム」 は建っていました
エントランスの古い商家に蔵をイメージした現代建築が接続する中庭を囲む回遊式の企業ミュージアム
何も知らずに訪れたのですが とても充実した体験型ミュージアムで 存分に楽しめました
建築も素晴らしい
外観は蔵を模しながらも現代的な洗練されたデザインで 内部も今のご時世では段差の多い動線にはいろいろとご意見もあろうとは思いますが 起伏にとんだ回遊式の展示動線は変化に満ちて来場者を飽きさせず 運河を見せるピクチャーウインドウや 床・天井の仕上げなど 展示内容とともに建築も見応え充分
後で調べてみますと企画・展示計画が電通で 建築設計はNTTファシリティーズ そしてアートディレクションが佐藤 卓氏 なるほど!

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運河に面した蔵造りの建物群の風情
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ミュージアムのメインエントランス
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ミツカンミュージアムを後にして 「小栗家住宅」の前を通り 「半六庭園」へ
そこに建つ「旧中埜半六邸」で昼食 明治22年築の屋敷と庭園とが整備されて一般公開されています
この 中埜家 というのがミツカンを始め半田を支えたのですね
残念ながら 小栗家住宅は内部を見ることが出来ず 旧中埜半六邸・庭園にはあまり感じることなく 食後隣の 中埜酒造「国盛 酒の文化館」へ
昔の蔵を活用した 酒つくりの展示館
一通りのガイドツアーのあと 徒歩ツアーの私には利き酒体験!
アルコール度の高い生酒から ノンアルコールの甘酒まで 6-7種類のお酒を味わって もう私はすっかりこのミュージアムが好きになってしまいました・・・

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運河に面した町並み
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小栗家住宅
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旧中埜半六邸の座敷床の間 厳格!
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国盛 酒の文化館

よい気分で 酒の文化館を後にして 「旧中埜家住宅」へ
中埜半六の別邸です 旧中埜半六邸が和風住宅であるのに対し こちらは明治時代末期の洋風建築で 国の重要文化財指定を受けています
設計は鈴木禎次 明治44年の建物です
ハーフティンバーの壁面・変化に富んだ屋根など、多彩な外観の中央部 バルコニーの意匠が繊細でとても可愛らしい
残念ながら内部は非公開でしたが 窓からのぞき込んでみますと 順路を示す標識やスリッパなどが見られ 公開の折もあるのでしょうね

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旧中埜家住宅 外観
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バルコニーの意匠

ここに至る途中に街区ひと区画まるまるのとてつもないお屋敷?があって いったい何?と地図検索をかけてみますと「中埜産業」とあります
とことん 中埜 の町なのだ・・・

そして最後に 現在は「半田赤レンガ建物」という名称で一般公開されています 木骨煉瓦造の建物へ
中野から中埜に名を変え 丸勘からミツカンへと変えた四代中埜又左衛門がビール業界に打って出たカブトビールの製造工場
日本では珍しい これでもかっ!というくらいに斜材がいっぱい入った木骨煉瓦造の建築です
明治31年竣工の建物で 設計は妻木頼黄
工場内を低温で保つための建築的工夫などがわかりやすく展示説明され また 外壁になまなましく残る第二次大戦中の機銃掃射の跡など 歴史の証人としての顔も持ち合わせた建物です
もちろん ビールの製造や その多彩多才な広告宣伝・販売戦略などについての展示も充実 楽しめます
かつて 修復整備前の写真を見た時には こんな建物が愛知にあるのか! とびっくりしたことがありました
商業施設としてよみがえった本日の姿には いささか電飾が賑やかすぎて違和感も覚えましたが よくぞ残されたものです
耐震改修も含めた修復設計・工事の概略も展示されていまして 興味深く拝見しました

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半田赤レンガ建物 外観
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外壁に残る機銃掃射の跡 この建物は戦時中 中島飛行機製作所の施設であったそうです
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レンガ5層の断熱壁 直近のプレートがその解説ではなく 傘立ての案内なのはご愛敬

半田赤レンガ建物内の壁に額に収められて飾られていた この建物の写真
建物に正対してすみずみまでくっきりきっちりと写し取られた建築写真です
「寄贈 村井**」と表示されていました
そう 半田は 建築写真家 村井修先生のご出身地でもあります
先生の「記憶の風景」というモノクロの写真集には 昭和30年代の半田の風景も多数写し込まれています
同じ愛知県尾張地方出身ということで 先生にはいろいろと気にかけていただきました
もったいなくも ありがたいことでした
「記憶の風景」が出版された際には そのあとがきについて「ちょっと泣かせる文章でしょ」と気恥ずかしそうに語っていらっしゃった先生の口調を思い起こします
この写真は紛れもなく先生の趣きを伝えています
が 半田赤レンガ建物が保存修復成されたのが 平成26-27年にかけて
先生がお亡くなりになったのが 平成28年
写真には 「撮影 村井修」のクレジットの記載はありませんでしたが
先生がお撮りになったものか スタジオの方のものなのか・・・

一日かけての半田巡りでしたが パンフレットを見ますとまだまだ見どころがいっぱい
また改めて訪れたいと思います
本日の成果は以下の通り!

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左から
復刻大正カブトビール
復刻明治カブトビール 
国盛 酒の文化館 のラベルの 冬季限定 本醸造 しぼりたて生の原酒
ミツカン 純酒粕酢 三ツ判山吹

  1. 2018/02/24(土) 21:33:23

名古屋 丸栄百貨店

先頃 名古屋の丸栄百貨店を見学してまいりました
尾張で育った私は 子供の頃に名古屋へ連れていってもらうことは特別な出来事
そしてその行先は栄の オリエンタル中村(突然思い出された懐かしい名前!) や 丸栄 などのデパート
子供心には デパート は 夢の場所でした

もちろん建築として眺めたことなどあろうはずがなく 丸栄 は 壁面になにやらタイルで絵が描いてある というのみの記憶
建築の仕事に就くようになってその建築が 村野藤吾の設計で学会賞受賞作と知ってからも 特段の意識もなく わざわざ見に出掛けたこともありませんでした
その丸栄が 今年の6月で閉店し建物取壊し と知って かつて 心斎橋そごう を そこにあるのが当たり前すぎて建築として見に行くこともないままに取り壊されてしまったという轍を踏まぬように と出掛けた次第です

建物は三度にわたる増築を重ねて今の姿になっているそうです
子供の頃の印象に残る西面のタイル画の壁面は第二次の増築
大通りに面した格子状の外観はそれに先立つ第一次の増築の際のものだそうです
この 垂直と水平の格子の繰り返しと それを一部切り取って設けられた所々のアクセント
そして東面には格子の中に配された大きな壁面
そうした扱いがいかにも村野さんらしくて いいなぁ と見惚れます
格子の壁面と タイル画の壁面との交差部は 隅が切られた処理がなされており 見上げてみますと その三角形の天井部分には色とりどりの彩色
「丸栄百貨店」の突き出し看板の上部には これまた村野さんらしい 何ともユーモラスな印象のモニュメント

さすがに月日の流れを感じさせられる劣化も多く見られましたが 建築としての香りはぷんぷんと匂いたつ 滋味に満ちた建物でした

20180204maruei 001外観
20180204maruei 002北西角の隅切り部分のルーバー
20180204maruei 003西側壁面のタイル画
20180204maruei 004北西角の見上げ
20180204maruei 005東壁面の格子状の構成と
それを破る壁面
20180204maruei 006格子の切り取りの妙技
20180204maruei 007袖看板上のユーモラスな造形
格子切り取り部にはコーン状の
モニュメント
20180204maruei 008エレベーター扉の
東郷青児の画は各階共通
20180204maruei 009屋上への出入り口に残されていた扉の引手
まさに村野さんのマジック!
20180204maruei 010搬入口脇の業務用の門扉
20180204maruei 011子供の頃の夢の場所
屋上 は人一人いない
さびれたところと
なってしまっていました
20180204maruei 012子供心に不思議な想いで
眺めた鬼門の社は健在
20180204maruei 0131階エントランス壁面に
表示された学会賞の銘


  1. 2018/02/16(金) 06:15:09

アンチゴーヌ

素晴らしかった
ここまで舞台に入り込んで魅入ったのも久しぶり

舞台「アンチゴーヌ」を観てきました

お芝居には、物語が面白い セリフに魅かれる 役者がいい などいろいろと魅力がありますが
ともかく今日のこの舞台は 生身の役者の圧倒的な力 に尽きました
余分なサーヴィス精神(?)も一切ない ともかく直球勝負の物語りでの しぐさ・表情・動き・セリフ
そして それを肌でじかに感じ 飲み込まれることを可能とするのは 四つの島状の客席が囲む十字形の舞台
そこに置かれた二つの椅子があるのみ 余分なものは一切ありません
役者の存在そのものしかない
蒼井優 と 生瀬勝久 の二人を中心に ともかく濃密な空間・時間

感情・本音に誠実であり続けようとするために命をも落すことも厭わない アンチゴーヌ
王ゆえに 大人ゆえに 制度・建前に忠実であろうと苦悩し葛藤しつつも命を奪わざるを得なくなる クレオン
そして 本音も建前もなく 言われるまま の安穏な日々に流される 衛兵 (に代表される一般市民?)
そのような 生き方の選択以前 の幸福な 小姓 (に代表されるこども)

物語り後半での 蒼井優と生瀬勝久との息をもつかせぬセリフの応酬
法で裁かれる側のアンチゴーヌが クレオンを人として裁き追い詰めていくさまはまさに鳥肌ものの迫力でした
そして 十字形の舞台が十字架を思わせ 途中その舞台の交点に蒼井優がうつ伏せに両腕を広げ十字となって静かに伏せて
十字架に十字架が重なって見える瞬間には はっとさせられます
交差する二本の直線状の舞台は 離れて対峙する役者を舞台間近に設けられた客席からは同時には視野には納めきれない
その距離感も素晴らしく効果的でした

緊張感が一瞬たりとも途切れることなく
途中休憩なしの 濃密な2時間10分
あまりに見入りすぎてしまい
観おわった後はしばし ぼぅー として虚脱感・・・
現実に還るのに時間がかかりました

antigone.jpg
  1. 2018/02/12(月) 19:03:05
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